米子あれこれ 事始めの日

 真夜(まよ)に目が覚めてしまい、しばらく雨の音を聞いている。12月の半ばの夜ともなれば、両肩の隙間から入る寒気を避けるために布団に潜り込もうとするはずなのに、今年の冬は異常に暖かい。

 窓に吹きつける雨の音も、雨粒がひとつずつ独立して聞こえてくる。山陰の冬の厳しさは風の強さにも表れる。例年ならこんな夜の雨粒は、礫(つぶて)のようになって吹きつけてくることを知っている。けれど、今夜はそれとは違うリズムを奏でる不思議な雨だ。

 寒くはないが風邪もひきたくないので、部屋を温めようと枕元に置いているエアコンのスイッチを入れる。稼働する音は雨音に消されて、入電を示す薄い緑色のランプだけが光っている。目が慣れてくると、水屋横に掛けている令和5年のカレンダーがエアコンの風に揺れている。最後の1枚になり、身が軽くなったせいで微量な風にも反応している。

 この1年は、10年分の出来事が重なった年であったように感じる。喪に服すお正月だけれど、少し寝て、朝が来たら事始めとして家の煤払(すすはら)いを始めよう。

 「一年の疾(はや)きこと知る古暦(ふるごよみ)」

(千)

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