その昔、「末は博士か大臣か」という言い回しがあった。子どもに対して、将来は博士や大臣のような“立派な人”になってほしい、という期待を込めてかける言葉だ。
いまはどうだろうか。まず「博士」、つまり学者の方だが、日本ではとくに科学技術力の低下が語られて久しい。2023年10月25日、世界で最も権威ある科学誌といわれる『ネイチャー』は、「日本の研究はもはやワールドクラスではない」というタイトルで、その現状や理由を分析する記事を掲載。発表論文数も年々、減少の一途をたどり続けているという。研究者が置かれている研究資金不足、膨大な雑用といった環境の厳しさもしばしば問題になる。とても「『博士』になれば未来が開ける」という状況でないことは、誰の目にも明らかだ。
そして、「大臣」の方はさらに目指すべき仕事、立場ではなくなりつつある。今回の、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件では、キックバックを受けたと報道される4人もの大臣が同時に交代した。それでもテレビの特番が組まれるほどの大騒動にはならないのは、それだけすでに国民が政治を信頼していないからだろう。「大臣なんてそんなもの」と冷めきっているの...