自信を得るための学校 守口さつき夜間中学

 夜間中学と聞いてどんなイメージを持つだろうか? 今春時点で全国に44校、大阪府内には全国最多の11校が設置されている。2014年に文科省は「各都道府県に最低1校」の設置を要請した。公立中学校に設置され夜の時間帯に授業を行う夜間学級は、歴史的、経済的、社会的などの理由で、十分な教育を受けることができなかった人が読み書きや日本語習得をはじめ、義務教育内容を保障してくれる場だ。私たちは守口市の守口さつき夜間中学校(守口市立さつき学園夜間学級)を訪ねた。 

 在籍生徒数127人と全国的にも大規模校にあたる。年齢15~80歳代と幅広く、うち88人が外国籍。日本人や在日コリアンをはじめ中国、フィリピン、ネパールなど14カ国の生徒で多国籍だ。

 作文発表と授業見学、さらに交流会にも参加させてもらった。「私は今、なぜ夜間中学で学んでいるのか」がテーマの作文発表。日本人の中年女性A子さんは、学齢期に病気で登校できず、常に学歴に引け目を感じていた。その後も弟ら家族のために働き、自分の子どもを社会に送り出した。やがて自身と向き合い「学ぶ」ことへの思いが湧く。入学できる日を夢見て10数年もの間、大切に保管していた1枚のビラを持ち学校を訪ねた時、先生方が囲むように迎え入れてくれた瞬間を、A子さんは「生涯忘れない」と語った。

 つらかった過去の経験を思い出し、涙ながらに声を震わせて作文を発表する生徒たち。通いたくとも通えなかった経験をしてきた人ばかりだからこそ、「学ぼう」という意欲は極めて強い。勉強を「つらいもの」ではなく、知ること自体を「楽しい」と思いながら学んでいる姿に心を打たれた。

 日本語の授業見学ではプリントを音読し、文中の空欄に入る言葉や漢字を考えながら進行していた。問いかけに対し即答できなくても思ったことを積極的に発言。文章の意味が分からなければ、すぐに先生に尋ねメモを取る。

 今の大学生は、先生から問われても積極的に応じることは少なく、“誰かが答えてくれるのを待つ”か“当てられたら答える”という姿勢がほとんどだ。だが、夜間中学には「学びたい」という意識で授業を受ける姿勢があふれており、非常に新鮮で感銘を受けた。

 長年勤務されている2人の先生に伺うと「時代背景や社会状況を反映し、外国籍の生徒が増加した」という。かつて多かった外国人労働者は「円安で減っている」と思われがちだが、私たちが調査したところによると、実際はベトナムやネパール、バングラデシュなどまだまだ日本市場に魅力を感じて留まるアジアを中心とした外国人は多いようだ。彼らにとって「日本語が読み書きできて話せる」という事は日本で生きていくことに直結するから真剣そのものだ。

 夜間中学で学ぶ生徒の層は変化しても真剣に「学ぶ姿勢」はいつの時代も変わらない。さらに知識を得るだけでなく、生徒同士の交流を通じ人間性や社会性を育み、生きる自信と誇りを取り戻す。そんな貴重な場こそ夜間中学なのだ。(大阪国際大学人間科学部・上地智巴、西本奈央)

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