国と自治体は「対等・協力」の関係だとされているが、自治体が「自分たちのことは自分で決める」という主体性をこれからも保てるのか。その分岐点が迫っているのを知っているだろうか。
9月26日から改正地方自治法が施行される。改正の最大のポイントは、「国の指示権の拡大」だ。
大災害などの国民の安全に重大な影響を及ぼす非常時などに、国が自治体に対応を指示できるようになる。自治体からの事前の意見聴取は努力義務で、強制力を伴うものではない。それに、こういった指示が出されるのは本当に大災害時に限るのか、という疑問もある。
今回の改正で私が最も懸念しているのは、実際の効力以上に心理的な影響があるのではないかという点だ。私は現在、北海道の小さな自治体の診療所に勤務しているが、この町にも人口減や高齢化の波が押し寄せ、行政は必死に対策を講じている。そこには住民も主体的に参加しているが、「自分たちで何をやっても無理ではないか」とあきらめる声もあり、みなギリギリのところでがんばっているのを実感している。そこで国の指示権が拡大するとなったら、がんばりを維持する気力もうせて、「もうすべて国の言うなりになるしかない」と...