舞台、映像で約70年にわたり、主演し続けてきた俳優・浜木綿子。開場から舞台に立つ東京・日比谷の2代目帝国劇場は建て替えのため2月末に幕を閉じた。浜の航跡を人との出会いを軸にたどる。
× ×
浜木綿子が宝塚歌劇団雪組に所属した際に多く相手役を務めたのがトップ男役の明石照子である。1960年9月宝塚大劇場雪組公演「カルメン・カリビア」などで名コンビとして人気を博した。「明石さんは吸い込まれそうな目とバイブレーションの効いた歌声がセクシーな男役でした」。明石は62年まで在団し、85年に亡くなった。
もう一人、忘れられない存在が春日野八千代である。28年入団で2012年に96歳で没するまで歌劇団に在団して多くの作品に主演し、気品、美貌、演技力を兼ね備え、「白薔薇のプリンス」と呼ばれた伝説的男役だ。
1958年1月、宝塚大劇場の月組公演「恋人よ我に帰れ」で相手役に抜てきされた。「みんなの憧れでしたからうれしかったですねえ。生徒全員が『宝塚の神様』と尊敬していた方ですから」
18世紀の米国が舞台。フランス革命派の身分を隠す奴隷の男(春日野)と富豪の娘(浜)の恋物語で、ラブシーンがあっ...