対岸の愛媛側で獲れたら岬アジ
魚料理に忘れられない味がある。それほどのおいしさとは、魚そのものが旬で鮮度がいいから、ということと調理法が素晴らしいので忘れられないという二つの要因があろう。
１０年程前、小倉で食べた「関アジの握り」は、大阪で食べる「アジの握り」とは違う食べ物だった。
魚も農産品もブランドものが大はやり。ブランドがつく前より３倍にハネ上がる魚があるというから、他の成功事例をまねようとする動きや産地偽装が起こるのは当然といえる。「大間のマグロ」「関アジ・関サバ」「明石タコ」などは誰もが知る名ブランド。当然のことながらブランドの由縁はおいしいからに他ならないが、好き勝手に自称できるものではないようだ。
扱い方が違う
例えば、「関サバ」を名乗るには必須の条件がある。一つ目は、大分県漁協佐賀関支店に所属する組合員（漁師）が伝統の一本釣りで釣りあげたこと。次に平均的な大きさである７００グラム以上必要なこと。そして、釣り上げた漁師が佐賀関支店と取引する５社の仲卸業者を通して出荷されるサバだけが「関サバ」と称することができる。
佐賀関町役場の水産課に地元漁師を紹介してもらい、なぜおいしいのかコメントを取ると、「潮の早い豊予海峡で育ったサバやアジは身が締まっとる。しかも、同じ海峡に生息する生物を餌にするから、もっとうまくなるんじゃ。それに魚の扱い方が全然違う。一本釣りで丁寧に釣り上げて、生きたまま港に持って帰る。絞める時も一気にやって、身を壊さんようにするからな」とのこと。
これは科学的な根拠がある。魚肉のなかにエネルギーの源となるアデノシンⅡリン酸という物質があり、死後これが分解してうまみ成分のイノシン酸に変わる。魚が死ぬまでバタバタと暴れまわると、この成分が無駄に消費されイノシン酸が少量しか生成されないという。つまり釣り上げた魚を瞬時に殺すと大量のイノシン酸が生成され「うまい！」ということになる。
初となる商標登録
なかでもブランド競争が激しい一等賞はアジがダントツ。宮崎「北浦灘アジ」、愛媛「岬アジ（はなあじ）」、対馬「てっぺんアジ」、五島灘「ごんアジ」、沼島「キアジ」など数え上げればキリがない。
しかし、釈然としないこともある。超一級ブランド「関アジ」が取れる豊予海峡は、豊後水道の中で水路が最も狭い部分で、海峡幅は約１４キロ。この同じ漁場で取れたアジが九州佐賀関に上がれば「関アジ」、四国三崎側で水揚げされれば「岬アジ（はなあじ）」と呼ばれる。「岬アジ（はなあじ）」は安いらしい。取り扱いの厳格な管理と相まって、水産品として全国初となる商標登録が認められた「関アジ」は、さすがブランド魚でも格が違う。漁業関係者の努力と市場の評価が相まって値段の大きな差異となって表れているのであろう。
週末のイチオシ気配
■船①■北港・大阪
神戸沖の朝アジショート便で１６日、マアジ１５～３３センチ３１尾が竿頭。サギキ仕掛け８号、オモリ３０号ドンブリカゴ。要予約。▽ヤザワ渡船＝電話０６（６５７３）７７１２
■船②■東二見・兵庫
マダコがスタートした。タコエギで同魚０．３～１．５キロ５～２０パイ。８月にかけて尻上がりによくなる。オモリ５０号。要予約。▽西海丸＝電話０７８（９４２）６４８０
■船③■比井・和歌山
日の岬沖のトフに出船するイサギが上昇気配。１６日、２人で同魚２６～４０センチ９０尾が竿頭。オモリ１２０号。要予約。▽岬旅館＝電話０７３８（６４）２９７５
■船④■谷川・和歌山
淡路沖のクログチ堅調。１６日、同魚３５～５５センチが１０尾。サオ２．４メートル、オモリ８０号、エサはイカの切り身など。要予約。▽恵比寿丸＝電話０７２（４９５）０５９１
■磯①■大引・和歌山
グレ見込める。１７日、アシカの子でグレ２８～３３センチ８尾。ヒジキの裏チョボ、オオクラなどの実績場も有望。水温２０度。▽村井渡船＝電話０７３８（６５）１０４１
■磯②■尾鷲・三重
グレ期待。この時期は４０センチ台後半が姿見せる。チヌも２～３尾交じる。イガミ専門に狙えば３０～４０センチ５～１０尾見込める。▽宮城野渡船＝電話０９０（２１８６）３３１３
■筏■堂の浦・徳島
チヌ好調。１７日、湾口カセで同魚２７～４３センチ１４尾とマダイ３３センチ１尾（ダンゴ釣り）。エサはサナギ。要予約。▽斎藤渡船＝電話０９０（７３８２）０８３７
■ボート■紀伊長島・三重
マダイ好調。１７日、船外機ボートで同魚３０～５３センチ６尾とワラサ７２センチ１尾。他にキス２０センチまでが１５～３０尾。要予約。▽石倉渡船＝電話０５９７４（７）０７１２
■波止■大阪・大阪北港
落とし込みのチヌ好調。同魚４０～５０センチ５～１０尾。他にエビ撒き釣りでハネ５５～６０センチ１～３尾、フカセ釣りでチヌ４０～５０センチ２～５尾。▽ヤザワ渡船＝電話０６（６５７３）７７１２
■バス■琵琶湖・滋賀
近江大橋周辺で３５～５５センチ３～８尾期待できる。テキサスリグ、ワームにヒット多い。急上昇必至。▽小林貸船釣具店＝電話０７７（５２２）６３４７
（大阪日日ＡＰＧ 川崎禎昭）
