「第28回鳥取県アマ囲碁名人戦」(新日本海新聞社主催、県囲碁連盟後援)の決勝3番勝負が2月23日、倉吉市下田中町の中部囲碁会館であり、門脇宏幸六段(43)=大山町=が秋藤伸一七段(55)=倉吉市=を2勝1敗で下し、2年ぶり7度目の名人位を獲得した。盤上の激闘を振り返る。
【総評】立会人である鳥取県囲碁連盟代表幹事で日本棋院県師範の米原勇夫氏の合図で開始された第1局。
黒番の秋藤さんは今では懐かしい感じの高中国流で臨んだ。一方の白番門脇さんは中央を大きく構えて黒の侵入を誘う展開に。入ってきた黒を生かすか攻めを続行かという作戦の岐路に立たされた門脇さん、この時の判断がどうだったか。この後左下隅の白地を荒らす手順に回った黒が優勢となりそのまま押し切って中押し勝ち。
第2局は両者の石が競り合う展開だったが、徐々に白の秋藤さんに薄みが目立ちはじめた。白の眼形が危うい場面もあったが、黒は好判断で大どころを連打しリード。門脇さんが5目半勝って1勝1敗となった。
第3局は黒番の秋藤さんの実利対門脇さんの勢力という、がっぷり四つに組んだ決勝局にふさわしい碁となった。しかし勝負どころで黒が好機を逃しては白が徐々に優位に立ち、門脇さんが白番8目半勝ちで7度目の名人の座についた。
(観戦記者=県囲碁連盟幹事・湯本正雄)

● 秋藤 伸一
○ 門脇 宏幸
(6目半コミ出し)
一気に優勢
白の門脇さんは38と囲って全部白地だと主張するが、黒の秋藤さんは39と侵入して勝負を挑みここのシノギ具合が勝敗を左右する。
黒51に対し白は56と押さえたが、白57と打ってこの黒の死活を狙う手もあり、ここで白は大いに悩むこととなった。黒が取れなかった場合、白は収拾がつかなくなる。
白86は門脇さんらしい鋭い手だったが、後のまとめ方が難しくなった。白Aと打つのが簡明策で左下隅はほぼ白地確定。
白94でも白Bを利かせば、黒101に対し白105と打つことができ、この図も白踏ん張っている。白106サガリでは白107とこちらをサガる手もあったが、味の悪いことこの上ない。白110と後手で取った手が小さく敗着か。
黒117・119と連打して白72を飲み込んでは黒の秋藤さんが一気に優勢となった。
119手以下略=
黒中押し勝ち

● 秋藤 伸一
○ 門脇 宏幸
(6目半コミ出し)
重大な逸機
黒の秋藤さんは第1局と同じく高中国流の構えで、黒31まで黒地も大きいが白の門脇さんの勢力も相当なものというお互いの主張を通す決勝局らしい力の入った競り合いとなった。
白は34と右上隅に手をつけていき、白42まで立派な生き。続いて黒も左下に43とカカって黒53まで安定を得た。
ここで打たれた黒57は薄い手で一路控えた黒Aが堅かった。白82と打たれ黒57が切り離されてしまい、白90となっては中央の白模様がふっくらしてきた。
ここで黒の放った91が重大な逸機だった。白92と打たれては白地が余りに大き過ぎる。黒は92と打っていけば白地はかなり削減できた。
黒Bからデギッていく勝負手もあったが、黒95と白96の交換がそれを消してしまって白大優勢。このまま門脇さんが逃げ切って名人を手にした。
114手以下略=
白8目半勝ち
好勝負の対局だった
名人位を獲得した門脇六段の話 3局全てがどちらが勝ってもおかしくない好勝負。結果が出せてうれしい。
ミスが出たのは残念
敗れた秋藤七段の話 接戦の中、好機を逃したり小ヨセでミスが出たのは残念だった。