鳥取市西町3丁目のわらべ館のシンボルとして、1995年の開館当時から市民に愛されてきた「からくり時計」。長らく不明だった人形や楽曲の制作者について、同館の高橋智美企画員が1年間かけて調査し、いずれも有名な作者によるものと判明した。高橋さんは調査結果をまとめ、同館発行の冊子「音夢」で発表。「作者の意図や人形たちの役割などを知ってより身近に感じてほしい」と話している。
同館のからくり時計は中庭に面して設置され、1日9回、1時間ごとに「ここはふるさと」「春が来た」などの8曲が4分半流れる仕組み。太陽のような模様の円盤が反転すると、大黒さまやウサギ、金太郎などの人形が登場し、陽気に音楽を奏でる。子どもたちにも人気で、音色に合わせて踊る姿がよく見られる。
●企画書を発見
高橋さんが調査を始めたのは昨年1月、地下倉庫で見つけた時計会社の企画書がきっかけ。古い職員も知らなかった制作者について、企画書を頼りに制作会社や県など関係者の元に出向き、資料探しや聞き取り調査を実施。似た人形があれば全国を駆け回った。
1年間にわたる取材の結果、からくり時計の音楽は、中森明菜さんら有名アイドルなどへの楽曲提供で知られる小泉まさみ氏、人形は彫刻家の大森達郎氏(1933~2011)が制作したことが分かった。
高橋さんは両氏のプロフィルをはじめ、「からくり時計は絶対に楽しいものに」という小泉氏の信念のもとで作られた同館の時計についてまとめ、「からくり時計を訪ねて」として、「音夢」第17号で発表した。
●再注目浴びる
高橋さんによると、からくり時計は1984年のセイコーマリオンクロック(東京都)を皮切りに、90年代にかけてブームが到来。全国の商業施設や公共施設に設置されたが、維持管理費の負担も大きく、今では稼働できなくなった時計も少なくないという。
近年、有志らによって止まった時計を再び動かそうとする動きが出ており、愛好家らの発信によって再注目されている。2月下旬にはテレビでからくり時計の特集が放送され、同館も交流サイト(SNS)で時計を紹介したところ、多くの反応があった。
高橋さんは「からくり時計を今もなお良いなと思ってくださる方がたくさんいることを実感した」と笑顔。「今後もメンテナンスを続け、いつでも楽しんでもらえるよう良い状態を維持したい」という。
◇「音夢」第17号は希望者に無料配布しているほか、同館ホームページ上でも該当部分のみ公開中。