JR西日本の特急「やくも」(出雲市-岡山間)の新型車両「273系」が6日、いよいよデビューする。運行開始を前に、試乗会には全国の鉄道ファンが訪れ、関連商品の開発やツアーの販売が熱を帯びる。地元関係者は山陰観光の起爆剤になり得ると期待を寄せている。
同社は新型車両計44両(4両11編成)を6月15日までに順次導入する計画。国内初となる車上型の制御付き自然振り子方式で乗り物酔いのリスクを大幅に軽減。座席は新幹線並みの広さを確保し、グリーン車の半室にグループ向け座席「セミコンパートメント」を設置。車椅子スペースや多目的室を備え家族利用も見込む。
3月に同社が実施した新型車両の一般向け試乗会には全国各地から応募があり、倍率は56倍となった。反響の大きさにJR山陰支社は「高い注目を集めている」と実感する。
運行に先立ち、JR西は米子駅や一部停車駅のホームに新たな駅名標を設置する。6日からは、米吾(鳥取県米子市)が新型やくもとコラボレーションして地元食材を使った「特製やくも弁当」を販売。一畑電車(島根県出雲市)もやくものイラストを挿入した出雲市駅―出雲大社前駅間の往復硬券と硬券を貼る台紙のセットを販売するなど、各社がコラボ商品の開発で山陰観光の機運醸成を図る。
こうした盛り上がりに旅行会社も熱視線を送る。阪急交通社(大阪市)もその一つ。新型やくもで岡山発の出雲市を観光する日帰りツアーを販売したところ、4、5月はほぼ完売となった。
担当者は「報道やCMで新型車両の存在は他県の人には定着している。乗りたい人は増えていく」といい、今後は「米子エリアなど沿線でも年間を通じて『やくも+アルファ』の観光をしっかり考えていきたい」と意気込む。
米子市観光協会の大塚寿史専務理事も「この地域をアピールする絶好の機会。追い風が吹いている」と現状を捉える。「来てくださる人は確実に増える。牛骨ラーメンやサバしゃぶなど地域の食を一緒に楽しんでもらいたい」と期待する。