日本を代表する指揮者のひとり、秋山和慶さんが1月26日に亡くなった。84歳だった。クラシック音楽ファン以外にはあまりなじみのない名前かもしれないが、そういう人にこそぜひ、秋山さんのことを知ってもらいたい。
ネットでは秋山さんの死去による衝撃、悲しみが広がり、収まる様子がない。それは、秋山さんがプロ・アマ、有名・無名、都会・地方を問わず実に多くのオーケストラや合唱団を指揮、指導したり、組織の運営にかかわったりしてきたからだ。私自身、「私も秋山さんにお世話になった」という人のあまりの多さに驚いている。
秋山さんは世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルから3回も指揮の依頼があったが、結果的にはそれを断った。自身の回想録によると、その時期、東京交響楽団の音楽監督であった秋山さんは、「受けていれば、私のその後の人生は変わっていたかもしれない。でも、私には、自分の楽団を放っておいてベルリンへ行くことなどできない、してはならない」と思ったのだそうだ。
なぜそんな決断ができたのか。今回の死去を受けて後輩の指揮者・下野竜也さんが書いた追悼文に、秋山さんから言われた言葉が記されていた。「君達には言っ...