【逍遥の記(17)】生の悲しみ描く画家の再生

 堀江栞、苦闘の結晶「かさぶた」110点

  •  「後ろ手の未来2023」(2021―2023年)が展示されている様子=東京・神楽坂のギャラリー「ルートKコンテンポラリー」
  •  「堀江栞 かさぶたは、時おり剥がれる」の展示風景=東京・神楽坂のギャラリー「ルートKコンテンポラリー」
  •  「堀江栞 かさぶたは、時おり剥がれる」の展示風景=東京・神楽坂のギャラリー「ルートKコンテンポラリー」
  •  「かさぶた #617」

 出会いは2022年春だった。神奈川県立近代美術館鎌倉別館で開かれていた「生誕110年 松本竣介」展を見に行き、同時開催されていた小企画展の方に足を向けた瞬間に、引き寄せられた。最初に目に入ったのは、ハシビロコウだ。多和田葉子の小説「献灯使」の表紙で見た絵だと、すぐに気づいた。だが、独立した作品として向き合うと、衝撃を受ける。タイトルは「凜然」。ずるずるとその部屋に入っていき、私は「堀江栞 触れえないものたちへ」の展示スペースにかなりの時間、居続けることになった。

 それから次の個展を待ち続けた。やっとかなった。11月下旬から東京・神楽坂のギャラリー「√K Contemporary(ルートKコンテンポラリー)」で始まった「堀江栞 かさぶたは、時おり剥がれる」(~12月23日)。そこで新たな堀江の世界と対面した。

 ■抗う

 鎌倉での展覧会にいったん戻ろう。「凜然」のハシビロコウの眼光は鋭く、怒りのようなものさえ感じる。岩絵具(いわえのぐ)で描かれたクチバシや羽の質感が生々しい。

 すぐ近くにあった「そっと」というタイトルの絵は、老いたキリンがモチーフと思われた。やはり目が印象的だ。「滅びゆく生...

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