戦争や災害の痛ましさ 人形作家・安部朱美さん 新作で平和訴える

 米子市の創作人形作家、安部朱美さん(73)が新作「兄ちゃんが守ってやる」を完成させた。ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの戦闘、気候変動に伴う自然災害の痛ましさを、両親を亡くしたきょうだいの姿に投影して表現。平和と命の尊さを訴えている。

 昭和時代の日本の家族をテーマにした数々の作品で知られる安部さんだが、新作の着想の背景には世界規模の問題があった。戦争・紛争や地球温暖化が社会に及ぼす悲惨な状況を、国籍を限定しないきょうだいの表情で表した。

 兄が、つらくて泣きじゃくる妹の肩と、疲れ果てて眠ってしまった弟の頭に手を置いて支えている。弟が兄の太ももに乗せた手に、頼りにする心情がこもる。安部さんは「自分が守るという責任感とともに、これからへの希望を兄ちゃんのたたずまいに出したかった」と言う。

 市民を巻き込んで終わりの見えないウクライナ戦争、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘。安部さんは新聞の小さな記事にも目がいくようになって久しい。地球温暖化の影響とみられる風水害などの激甚化も注視している。

 「運命共同体である地球での争いや気象環境の変化に対し、人間は何をしているのか、何をなすべきなのか」と考える機会が増えた。人形作家としての活動の中でその思いを帰結させたのが新作だった。安部さんは「次世代や子孫の未来にとって何が大事なのか感じてもらえれば」と願う。

 「兄ちゃんが守ってやる」は来年2~3月に愛知県安城市で開かれる創作人形展で披露する。

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