米子市で、0~1歳の乳幼児の保護者を対象とした子育て・親育ち講座「タムタムスクール」が、昭和50年代から40年以上にわたり続けられている。市が事務局を担っているが、企画や運営、広報は全て市民が行う。孤独になりがちな親たちに、子育てのヒントや“居場所”を提供している。
「歌とお話の世界にする魔法をかけますね」-。10月30日、同市西町の市児童文化センターの一室。この日の講師、読み聞かせ活動者の卜部(うらべ)節子さん(47)がタングドラムと呼ばれる楽器を奏でると、それまで泣いたり騒いでいたりした子どもたちが一斉に静かになった。
子どもを膝に乗せ、一緒に体を揺らして歌を楽しむ母親たち。卜部さんの落ち着いた読み語りで、親子は絵本の世界に浸った。「膝の上の温かさを感じながら、お母さんの声で絵本を読むと、親子の心がぐっと近づき、絆が強くなりますよ。家でいっぱい絵本を読んでくださいね」と、卜部さんは絵本を取り入れた子育ての良さを伝えた。
事業は市が鳥取県の補助金も活用して実施。運営は市民でつくる家庭教育支援チーム「とことこ・タムタム」が担う。10人のメンバーは幼保の元園長、社会教育委員や民生児童委員など子育て支援の経験者が中心。チームリーダーの卜蔵(ぼくら)久子さん(82)は「母親たちにとって子育てのヒントになれば」と長年、事業に関わってきた。
講座は前後期の計6回ある。メディアとの付き合い方や食や睡眠に関する講演、親子での散歩、バイオリンとピアノの生演奏など内容はさまざま。子育て環境が複雑化する中、メンバーらが現代の親たちに知ってほしいことを考え、講師や内容を決めてきた。
この日、1歳10カ月の長男、空ちゃんと一緒に参加した松田真琴さん(27)。母親を応援する内容の絵本『あかちゃんがわらうから』を卜部さんが読むと、松田さんの目から涙があふれた。松田さんは「タムタムスクールに来て、気持ちに余裕を持って子育てできるようになった」と話す。
卜蔵さんは「国を挙げて子育てと言うけども、簡単には浸透しない。市民がいろんな形で関わり、地道に続けることが大切。私たちは接着剤。お母さんたちが他のお母さんやスタッフ、講師とつながり、何か気づきを得てもらえれば」と話す。
◇本年度の「タムタムスクール」は今月13日で終了。来年度は5~7月に前期講座を開く予定。問い合わせは電話0859(23)5439、市こども政策課内の事務局。