備品をプロモーションに

吉武英行 五感の旅

 旅行好きの友人、知人から「ホテルの客室にある備品で持ち帰り可能なものは何」と聞かれることがある。それに対して私は「基本的に使い捨ての物はオーケー」と答えている。高級ホテルに宿泊するユーザーの多くは、ホテルグッズを記念に持ち帰りたいと思っている。女性にとっては、バスルームに並ぶおしゃれなアメニティーグッズは魅力だ。

 持ち帰ってよいものはホテルによって差がある。ずいぶん前だが、海外のホテルでは、創業当時の建物の素描がプリントされた小さな陶製の灰皿が客室に置かれ、裏面に「おみやげ」と書かれていた。この心遣いはさすがと思った。悪いと分かっていながら何もかも持ち帰ろうとするやからもいるが、いけないと知らずに持ち帰る客も多い。

 日本では温泉旅館などで旅館名入りの薄地タオルや手ぬぐいを持ち帰ることができるため、ホテルでも「オーケー」と考えている人が意外と多いようだ。これほど多くの日本人が内外の高級ホテルに宿泊しているにもかかわらず、使い方のルールやマナーが知られていないのは残念。

 そこで提案だが、持ち帰り可能な備品にシールなどのマークを付けるか、あるいは客室内に持ち帰り可能備品のリストを置いてみてはどうだろう。有料なら持ち帰りが構わないものや、製品として販売しているものの写真入りカタログも備えれば、ホテルの売り上げにもつながりそうだ。

 既にベッドまで販売しているホテルもあるそう。ホテル側のメリットを考えると、どうせ持ち帰られるならホテルのプロモーションにつながるグッズを備えるのも一案。家の中で使うものとか、しまい込んでしまうものでなく、人前で使うものを。

 高級ホテルを利用したことをさりげなく見せびらかしたい女心をくすぐる。おしゃれなデザインで金文字の入ったボールペンなどは効果が高いと思う。広告料と考え、高級感のある持ち帰りグッズを一考してみてはいかが。

 (ホテル・旅館プロデューサー)

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