「水の匂い」キーワード 今森さん写真展 滋賀県立美術館 滋賀の里山とらえる

 大津市出身の写真家・今森光彦さんが長年にわたって撮り続けてきた滋賀県の里山をとらえた作品から、「水の匂い」をキーワードによりすぐった92点の作品を展示する企画展「今森光彦 里山 水の匂いのするところ」が同市瀬田南の滋賀県立美術館で開かれている。小さな生き物の生態から人間の営みまで里山を通して表現している。9月18日まで。

 今森さんは1980年にデビューし、第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰をはじめ、数々の賞を受賞。学生の頃から世界各国を訪問し、熱帯雨林から砂漠まで自然に生きる生物とそれらを取り巻く環境を撮影し、滋賀・仰木地区の琵琶湖を望む田園風景の中にアトリエを構えて里山を撮影し続けている。今森さんの展覧会は同館では初めてとなる。

 同展は6章で構成。担当学芸員の芦高郁子さんは「奥山から水が下って最後は琵琶湖に行く構成。里山の水の流れから水の匂いを感じてもらえる展示になっている」と話す。92点中91点をこの展示会のために新たにプリントしている。

 第1章「はじまりの場所」では水の旅の始まりの地・水源地でもある原生の森の地表からにじみ出る水と土の匂いや、朝の渓流の幻想的な風景などの作品が並ぶ。そして第2章「萌木の国」、第3章「光の田園」、第4章「湖辺の暮らし」と続き、第6章の「還るところ」で琵琶湖までの水の循環を表現している。

 今森さんは「キャプションを見ながら写真をじっくり見てほしい。そして里山に出て、生き物に出会い、自分の庭や仲間と思ってもらえたら」と話す。同館の保坂健二朗ディレクターは「見て終わるのではなく、自然についてこれからどうすればいいのかを問い直し、考えることを美術館としても提案していきたい」と来場を呼びかける。

 関連企画として「スペシャルギャラリーツアー」や子ども向けの「切り絵ワークショップ 里山を作ろう!」などを開催。一般1200円、高大生800円、小中生600円。午前9時半~午後5時(入場は4時半)、月曜休館(祝日の場合は開館し、翌火曜休館)。問い合わせは電話077(543)2111、同館。

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