【逍遥の記(12)】最大の魅力は「未完」であること

 東京国立近代美術館の「ガウディとサグラダ・ファミリア展」

  •  サグラダ・ファミリア聖堂内観(c)Sagrada Familia
  •  東京国立近代美術館で開催中の「ガウディとサグラダ・ファミリア展」会場入り口
  •  「ガウディとサグラダ・ファミリア展」の展示風景。外尾悦郎「サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち」。サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に1990~2000年に設置、作家蔵
  •  「ガウディとサグラダ・ファミリア展」の展示風景

 最大の魅力は何だろう。未完であるということかもしれない。それはつまり、常に変化し続けているということであり、新たに生まれ続けているということでもあるのだから―。

 ぼんやりそんなふうに考えていたスペインのサグラダ・ファミリア聖堂の完成時期が、いよいよ視野に入ってきたという。着工から約140年。この「未完の聖堂」に生涯を捧げた建築家、アントニ・ガウディ(1852~1926年)の建築思想や聖堂の美しさを探る「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が東京国立近代美術館で開かれている(9月10日まで。滋賀、愛知へ巡回予定)。

 ■発見からの出発

 サグラダ・ファミリアが生まれた背景には、産業革命による貧富の差の拡大がある。バルセロナで書店と出版社を経営していたジュゼップ・マリア・ブカベーリャが創設した「聖ヨセフ信心会」が、貧しい人々の献金によって聖堂を建築することを発案した。このことにより、聖堂の建築には常に資金難がまとわりつくことになる。

 着工は1882年。ガウディは2代目建築家で、83年に31歳で就任する。

 ブカベーリャはガウディの見解として10年で完成させると公表した。1891年に巨額献金があっ...

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