“流し”生かし独自の世界へ おかゆが渋谷舞台の新曲披露 トークと歌唱力で魅了

 新元号になったその日にデビューしたシンガー・ソングライター、おかゆ(32)が5周年を期してCD「渋谷のマリア」のカップリングを替えた3タイプを同時発売した。19日アメリカ村・BIGSTEPで「大阪発・流行(はやり)歌ライブ」に出演。新曲はじめ5曲を熱唱、終了後のCD即売では再会を待ちかねたファンで長い行列に。この“令和のおんな流し”からますます目が離せなくなってきた。

 新曲の舞台・渋谷は彼女にとって東京の原点。札幌市出身でコギャルに憧れ初上京、格好だけはまねたが友達が誰もおらず渋谷・ハチ公前の広場で道行く人々の観察をしながらひたすらメモを取った。やがて歌手を目指し10年前から全国各地をギター1つ抱え「流し」て歩く日々。今では知らない方も多いが「流し」とは飲み屋を1軒ずつ訪れ、客のリクエストに応え即興で歌いチップをもらう職業。出た曲名を「知りません」とは言えないから、必死にうろ覚えのメロディーをギターで奏でたことも。「ウオッチングを続け細かい事までさまざまに目が行き届くようになって作詞に役に立ちました。お客さんのリクエストを即ギターで弾く時に、必死でコードを指で押さえ頭で組み立てた事が作曲の助けに」と言う。

 「だからこそ渋谷が舞台の曲はデビュー当時からずっと企画提案していた。でも思いが強過ぎてなかなか通らない。ようやくGOサインが出てからもあれこれ昔を思い出し、曲作りの時間が結構かかりました」と振り返る。

 舞台トークは「流し」で鍛えた鉄板フレーズがある。いわく「ネットで“おかゆ”と“ながし”を別々に検索したら、食べるおかゆと台所の流し台が出てきますからね! 必ず並べて検索して下さい‼」と、観客の笑いを取り一気に自身の世界に引き込む。この日はオリジナル以外に、やしきたかじんの「東京」を選び地名部分を“東京”から“大阪”に替え歌った。低音部がきれいに響くから、たかじんのような歌唱力ある曲も苦にせずこなせる。

 コロナの3年間が明け、終了後のCD即売には丁寧に応対。サインや握手、記念写真にも応じ、表情豊かにファンと言葉を交わす。普段は、BSテレ東「徳光和夫の名曲にっぽん」(金曜夜7時)の司会で、徳光をさりげなく支える。今月29日には五木ひろし司会のBS朝日「人生、歌がある」(土曜夜7時)に歌唱力を買われゲスト出演。

 「コロナの期間中は全国の皆さんと直接会って話すことができずホントに寂しかった。でもその間、昭和の演歌・歌謡曲をたくさん見聞きし直しました。シャンソンやジャズなどにルーツを持つ先輩方の曲を聴いてまずカバーで歌ってみることから。次はブルースにも挑戦したい」と夢は広がる。ギター1つで全て自分だけで完結する“おかゆワールド”は更に進化を見せそうだ。

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