以前にも、このエッセーの連載で私の入門当時(16歳頃)の落語の台本については書いたことと思う。「勉強をしてこなくて漢字が書けなかった私の台本は、平仮名ばっかりで改行も知らず、なんとも読みにくかった。その後4年間の前座修業を終えて二つ目に昇進し、漢字を覚えた20歳くらいの私が台本を書き直したら原稿用紙が半分に節約できた」というような内容だったと思う。今回は、20歳から25歳くらいの頃に改めて書き直した台本の話。
ここ数カ月の私は、入門したての頃に習った初歩的な噺を覚え直している。八っつぁん(八五郎)が隠居さんに人のほめ方を習って、よそでやってみるも間違えてしくじる「おうむ返し」というパターンの「子ほめ」。これは所作やしぐさが少なく、上下(かみしも)の基本が学べるところが初心者向き。与太郎が叔父さんに道具屋になってみろと仕込まれるも、お客さんをしくじってしまう「道具や」。こちらは与太郎という登場人物を学べるし、また品物を表すのに扇子や手ぬぐいを使い、しぐさが多いので、初歩の勉強になる。
どちらも二つ目になって書き直した台本を読んでいて、とても腹立たしい気持ちになっている。というのも、いか...