時計の中に広がる見知らぬロマンの世界 近江神宮の漏刻祭、専門学校生の情熱に感激

  •  藤岡みなみ
  •  「漏刻祭」で奉納された時計=2021年6月10日午前、大津市の近江神宮
  •  近江時計眼鏡宝飾専門学校の門=筆者提供
  •  眼鏡ルーペが似合うタヌキの置物=筆者提供

 木々に囲まれた静かな参道の途中にある古い校舎。そこには私が知らない世界が広がっていた。一年に一度だけ開かれる時の扉に誘われた。

 6月10日は時の記念日。天智天皇の671年に、漏刻(ろうこく)と呼ばれる水時計によって日本で最初の時の知らせが行われたことから制定されたという。滋賀県大津市にある天智天皇ゆかりの近江神宮では、毎年6月10日に「漏刻祭」が行われている。過去や未来に移動するタイムトラベルもののストーリーが好きな私は、時間の祭りが存在するという事実に心ひかれた。社会で当たり前のように使われている「時間」という概念の源を見つめる儀式。どんなことが行われているのか肌で感じようと大津市に赴くことにした。

 本殿の前には100席以上の椅子が並べられており、儀式の20分前に到着したがすでに半分以上の席が埋まっていた。

 地元の観光大使や時計業界の関係者が采女(うねめ)となり、平安時代の装束をまとってゆっくりと歩き出す。手に携えているのは国内時計メーカーの今年の新作時計だ。時計の歴史の進展を奉告し、神前に供えるのが通例だという。伝統ある厳かな儀式とピカピカの新製品という組み合わせに、時空がゆがむ...

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