伸び鈍化も先行き不透明な物価動向

  •  永浜利広(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

 先週、総務省から8月分の東京都区部消費者物価指数が公表されました。これによれば、ヘッドラインとなる生鮮食品を除く総合は前年同月比で2.8%上昇しました。伸び率は2カ月連続で縮み、前月から0.2ポイントほど鈍化しました。

 伸びが鈍化した主因は、電気代とガス代の値下がりとなっています。背景には、1年前の夏場に電気・ガス代が急激に上昇した裏の影響が出ていることや、一時期前までに生じていた燃料価格低下の影響が遅れて価格に反映されていることがあり、今月の伸び鈍化のほとんどをこうしたエネルギー価格の低下で説明できます。

 このため、生鮮食品とエネルギーを除く総合は前年同月比4.0%上昇と変化なく、さらに食料およびエネルギーを除く総合では同2.6%上昇と前月から伸びが拡大しています。

 こうしたことから、エネルギーを除けば企業による積極的な値上げが続いており、こうした値上げは、すぐに賃金に反映されないことからすれば、引き続き家計のやりくりは厳しい状況と言えるでしょう。

 昨年後半に物価上昇ペースが加速していることからすれば、今後もしばらくは前年比ではインフレ率の低下傾向が続くと予想されますが、足元の円安...

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