大森均の釣れ釣れ草 釣りで出合う幽霊

 街からほど近く、池の周りに墓場があり少年少女たちの絶好の肝試しスポットとなっているバスポイントが東播にある。地元出身のバスプロKさんは、この絶好の釣り場で花火まで上げて奇声を上げる少年たちに我慢がならなかったという。ある日、夕刻から移動を繰り返しながら釣り続けていたKさんが、ちょうど一人がすっぽり隠れるような祠(ほこら)のように削れた場所を見つけた。その場所は、毎晩奇声を上げているあの真下だった。陽が暮れて、例の一団がやってきた。

 その真下に移動して、ささやくようにお経を唱えた。

 「奴らの一人が、私が唱えるお経に気付いた様子でしたので、わずかに、さらに大きく唱えました。確認しようと示し合わせたのか、一瞬静まりましたが、突然もうパニック状態の大騒ぎでした。私はもう腹を抱えて大笑い、腹の皮がよじれるとはまさにこのことです。地響きがするほどの勢いで逃げ出した方角に向かって音の出るホッパーを投げて、ポコポコと音を出して追い打ちをかけたつもりですが、気付いていたかどうかは不明です」と、Kさんはさらに笑う。釣りの道中や釣り場での怪談は、ひとつの傾向がある。大勢の人と同乗する乗合船のなかでまっ昼間から「出たー!」という話は聞かない。海釣りや池釣りの場合は夜釣りに限られ、昼なら深い渓谷の薄暗い滝つぼ付近にその現場は限られる。なぜか一人での釣行時にのみ気味の悪い話があるのも符合している。釣りで出合う幽霊はその程度のものだ。

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