大森均の釣れ釣れ草 磯の名の由来

 磯釣りに行くと、つけられている磯の名前に「なるほど」と、思わず感心をしたりすることがある。釣り人が自分たちの都合で場所の特定のために好き勝手につけた、という程度のものが多いのは容易に想像ができる。しかし、同じ磯の名前でも漁師が古くから呼び伝えているものは、比較的大きな磯が多く、限りなく地名のニュアンスに近い。

 日本で早くから磯釣りが盛んに行われていた徳島県は、すでに昭和の初期には、伊島や牟岐などの磯には克明に名がつけられていたようだ。

 磯の命名にはいくつかのパターンがある。その形から「アシカ」「アンパン」「象の鼻」と、見えた様子を表したもの、位置関係で「1番」「2番」などとつけられたものなどがある。しかし、全く由来不明のもの、根拠を想像すらできないものも少なくない。「オハ」「チョーライ」などはその類だ。

 牟岐大島の湾内の奥を指して、「大森さん、あれが『珍宝岩』と言うんよ」と徳島の江頭弘則名人に教えられたことがある。後日、知ったことであるが、進入の角度により、この巨大な男性のシンボルを隠すように湾口の右側に位置する磯が「フンドシ」と知った。さらに、この男性のシンボルに似たうしろの小山の裏側に、女性のそれに似た岩があるらしい。それをチラッと隠すように位置する磯が「腰巻き」ではなく「バタフライ」と呼ばれていることから、あきらかにその命名の時期は「フンドシ」よりずっと後世のごく最近のものであることがわかる。磯の名の由来、なかなか興味深い。

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