山陰の冬の味覚を代表するズワイガニ。中でも価格が安く、手が届きやすい親ガニ(ズワイガニの雌)は庶民の味として親しまれてきた。近年は水揚げ量の減少や県外需要の高まりなどを受け単価の高騰が続いていたが、今年は昨年よりも水揚げ量が減少したにもかかわらず、単価が下落するという謎の現象が発生。店頭では昨年より2~3割安く売られている場合もある。関係者は、北海道で駆除名目で大量に水揚げされたオオズワイガニの流通が背景にあると分析している。
「去年は安くても500円を割らなかったのに」と驚くのは、海産物の販売で人気の道の駅「きなんせ岩美」(岩美町)の高垣雅則駅長。11月6日の解禁以降、活き親ガニが1匹330円で売られる日もあったという。19日現在も450円で販売しており「ようやく地域の人に手が届く価格になった」と喜ぶ。
県東部を中心に展開するスーパー「エスマート」(鳥取市)でも、昨年1匹598~698円で推移した親ガニの価格はここまで、498~598円と、100円程度値下がり。水揚げ量の多いときは398円で販売できたという。
今年の松葉ガニ(ズワイガニの雄)は高騰した昨年よりも販売価格がさらに2~3割高となることもあり、小林正明水産バイヤーは「松葉ガニをはじめ他の商品は軒並み値上がりする中で、親ガニは売りやすくなって助かっている」と安堵(あんど)する。