釣れないのには、理由がある。腕はともかく、釣れている釣り場に行くことが最も肝心であるが、情報の解釈を間違えている人が多い。スポーツ紙の釣況欄を見て1週間後に出かけたのにまったく釣れなかったということは当たり前。海釣りの場合、潮回りは2週間を経て同じ潮が回ってくる。
釣れている潮を参考に釣行に及んでも、2週間後なら同じ釣果を期待できるが、人間の都合で1週間後なら反対の潮になる。月曜日に喫茶店で読んだ新聞に「爆釣!」と書いてあったので次の日曜日に出かけてサッパリだった、というのはこのケースだ。
先日、長崎県五島列島玉之浦に出かけた際に釣具店でありえない話が出た。
玉之浦湾をなめるように沿って走る移動スーパーは、点在する集落のライフラインを担っている。この移動スーパーが集落付近に来たことを知らせるためにド演歌を大音量で流し、到着を告げて走るが、はるかむこうの対岸を進んでいるのが釣りの最中にも聞き取れるほど。「大森さん、このあたりのチヌはあの山内恵介の『瀬戸内最終便』を聞いたら喰(く)います。ホントですって」と真顔で言う。
釣りの時合いは朝マズメと夕マズメ。朝に福江の街を出て集落を回って、玉之浦湾沿いを走る時間帯がいつも夕暮れ近いマズメ時と合致しているだけと想像される。山内恵介の歌を聞いてチヌが食いだす? そんなアホな。