石破氏出馬会見 一問一答(詳報)

 24日に自民党総裁選に立候補する意思を正式表明した石破茂元幹事長=衆院鳥取1区。地元の鳥取県八頭町で行った記者会見で、記者と交わした一問一答は次の通り。

政治家の原点に立ち返る

 【記者】立候補表明に至る理由と経緯は。推薦人の確保状況も。総裁選では何を中心に訴えていくのか。

 私はこの4年間、ウクライナの戦争、あるいは激変する安全保障環境、なかなか信頼が取り戻せない政治、そういうことに強い危機感を覚えてまいりました。

 政治改革にも一生懸命取り組んできました。安全保障にも一生懸命取り組んできました。なおかつ、それができていない。

 その深い反省のもとに、そして「もう一度頑張ってくれ」という日本全国あちらこちらの声に応えるために、今回立候補を決意いたしました。

 そして推薦人の方々、それは20人の推薦をいただくというのは大変なことです。今までのように派閥中心ではありませんから、派閥から言われたからとかそのようなことではない。

 推薦人1人1人が、なぜ石破を推薦したのかということが、それぞれの地域で説明できなければなりません。大変なことです。

 そういうような厳しい中にあって、20人の方々のご推薦がいただけるということになりました。心から感謝をいたしております。

 その思いに報いるために、最後の戦いと位置づけ、全身全霊で向かってまいります。

 【記者】なぜ今回、地元での表明にこだわったのか。

 原点に返りたいと思ったからです。

 自分が政治家になった原点に返りたい。そして38年政治家をやらせていただいた。それはまず最初にこの地元中の地元である郡家、大御門、殿の方々に厳しい中、支えていただいて、それが私の原点です。党ではない。1人1人に誠心誠意接して、党ではなく国民を見る。その原点に立ち返りたい。そう思ってこの地を選びました。

 【記者】5回目の立候補。その覚悟は。なぜ最後の挑戦なのか。

 最後の戦いということを申し上げました。そして今までのいろいろな経験、うまくいかなかったことがたくさんあります。

 政治改革。それは、あのときの自民党の文書が、国民意識との間にずれを起こしたのではないかと。もう一度政治は国民のものという、自民党立党の原点に戻らなければならないのではないか。それが35年前のことです。

 選挙制度改革はできた。お金は確かにかからなくなった。だけど政治家は本当に国民のための政治をしているか。そういうご不信は今なお消えていません。私の一つ目の反省です。

 地方創生も大臣を拝命して一生懸命臨んできました。2年間一生懸命努めました。しかしながら人口減少は止まらない。地方の衰退は止まらない。これはなぜであったのか。食料の自給率は上がらない。農林水産大臣を務めながら、これはなぜであったのか。

 自分の多くの経験というのは、それは失敗と反省の連続でありました。それをきちんと踏まえて、その反省を踏まえ、新しい政治を実現したい。

 国民に信頼される政治、そして日本が次の時代にも生きていける政治。そのために集大成として、今までの経験・失敗・挫折それを踏まえ、全身全霊で最後の戦いに臨みます。

カネのかからない総裁選を

 【記者】裏金事件を受けて党改革が一つの争点となる。自民党をどう変えていきたいか。コストのかからない選挙運動として、告示前の事前運動など、これまでの総裁選とどう戦い方を変えるか。

 議員1人1人が自立をするということです。党よりも国民を見るということです。国民が何に怒り、何に悲しみ、そういうことを正面から見据えるということです。

 自民党は国民政党であるというのは、政治家のためではなく、国民のための政治をせよ、そういうことであります。政治と金については、金のための政治などもってのほか。政治に必要な金があるならば、その集め方は節度を持ったものでなければなりません。

 そしてそれをどのように集め、どのように使ったのかというのは、限りない透明性を持って国民に公開をしていかねばなりません。国民のために政治を行う、当たり前のことです。

 必要な金は節度を持って集め、そしてその使い道も集め方も限りない透明性を持って、国民に公開する。そういう政治であらねばならない。私はそう固く思っております。

 選挙のやり方についてでありますが、選挙管理委員会がお金のかからない総裁選ということで、一生懸命努力をしておられます。

 例えば、党員の皆さま方お1人お1人に、リーフレットを郵送させていただくだけで1億円。オートコールをかけるだけで1千万から2千万円。そんなお金がどこにありますか。

 お金のかからない総裁選であるべき、そして大勢の方が立候補されると言われています。私も含めて大勢の人が立候補する。いろんな制約はありますが、それぞれが党をどうするか、政治をどうするか、政策をどうするか、そういうことが可能な限り自民党員のみならず、国民の皆さまに伝わるように、そういう総裁選であるべきです。

 そして1人1人が、なぜこのような選択をしたかいうことが、納得をしていただけるような、そういうような機会を提供する。そういう総裁選であってほしい。そのように私は願っております。

 【記者】裏金事件を受け、どのようなルールを確立するのか。

 政治資金規正法改正をいたしました。それを徹底的に順守するということです。なお改善点はあると思っています。

 そういうような政治資金の使い方が本当に国民誰でも分かるようになっているかということです。本当にデジタル化はできているかということです。

 いかにして集め、いかにして使ったのかということが国民にきちんと分かる形で限りない透明性を持って、政治資金の問題に臨むということであります。

 そして、いわゆる裏金事件ということであります。

 この審判は国民からいただかなければなりません。いろんな問題はあります。しかし、自民党として厳しく臨むと同時に、国民の審判を受けるにふさわしい、そういう体制である、候補者である。それは自民党として、国民に対して責任を持たなければなりません。

 誰が総裁になるにせよ、総理になるにせよ、新体制ができるとするならば、審判を仰ぐ時期は本会議、あるいは予算委員会、その議論の場を通じて、なるべく早い時期に行うべきだというふうに私は考えております。

 国民の皆さま方に、ご判断いただける材料、それを可能な限り提供する。それが自民党の使命、私はこのように信じます。

 【記者】審判を受けるとおっしゃるが、選挙では、裏金を受け取った議員を公認すべきでないという意見もある。

 わが党の公認はそれぞれの都道府県連から上申が来て、そして選挙対策委員会において厳正公平に決められるものであります。

 総裁たらんとするものが、こうあるべき、あああるべきだということを今申し上げるべきだとは思っておりません。ただ、選挙対策委員会において、自民党として責任を持って有権者の方々にお願いできるかどうか、そのことは厳正に判断されるべきだということであります。総裁たらんとする者が、あれこれ選挙管理委員会、選挙対策委員会の判断、今から申し上げることはいたしません。

自民党を変える力が自分にはある

 【記者】2021年の前回の総裁選が一つの区切りとおっしゃっていたと思う。今回もう一度挑戦しようと思った一番の理由は。

 それは安全保障環境が激変したから。そして地方の衰退が止まらない、そういうような4年前と比べて状況がさらに変わったということです。

 そして私自身、区切りをつけたつもりです。その後、全国北海道から九州沖縄まで歩かせていただいて、1人1人の国民の方、若い方、高齢者の方、お子さん、男性、女性、石破さん辞めないでね、頑張ってね、今度もやってね、そういう声をどれほどいただいたことか。これに背くことはあってはならない。

 自分の安逸よりも国民のために全身全霊を尽くすことが、政治家の責任だ、そのように考えたからであります。

 【記者】今回最後の挑戦ということだが、過去4度の総裁選と比べて、自身を取り巻く政治環境の大きな違いは。

 自民党に対する不信が、かつてのリクルート事件のとき以上に高まって、国民の皆さま方の怒り、不信、そのようなものが高まっている。それを誰が変えるんだ、どこが変えるんだということを多くの方が注目をしておられます。

 一方において、総裁選やっても何も変わらないよっていう方が7割近くおられるということですね。それを変えていかねばなりません。政治は変わる、自民党は変わる。それを実現できるのは自分だ。

 政治環境の変化、国内外の状況の変化、そしてそれを変えていくための力、それは自分にはある。そのように確信をいたしております。状況が変わったからこそ、自分は出ねばならない。自分の安逸よりも、自分が身を捨てることによって国が国民が安心していただける、そういう国になるために一身をなげうつ、そういう決意であります。

 【記者】政治と金の問題で、岸田首相や現執行部への評価と総裁になった後の処分などの方針は。

 総裁を始め現執行部は一生懸命・誠心誠意取り組んでこられたというふうに思っております。これは自民党だけでできるものではありません。各党のご理解を得ながら、ここまでやってまいりました。

 一歩も二歩も前進したと思っていますが、なお十分ではありません。どのように集めるのかということには節度が必要です。パーティー何回やってもいいとか、利益率が8割9割でいいとか、そんなことにはなりません。

 いかにして節度を持って集めるかっていう、そしてどなたから何をいただいたのかということは、透明性を持って公開をするべき。そして何に使ったのかということも、誰が見ても分かるように、調べるために不眠不休で何カ月もかかるというようなことでは透明性は確保されません。

 出も入りも可能な限りの透明性を持って、政治のための金なんですよ、節度を持って集めました、きちんと使いましたよということが納得していただけるよう、さらに法改正等に努めてまいります。

 そしてこれから先、処分をどうするかということでありますが、それは新体制において検討されるべきことですけれども、私は新体制になれば、可能な限り早く国民の審判を仰がねばならないと思っています。その際に、自民党公認候補として、公認するにふさわしいかどうか、そういう議論は選挙対策委員会で徹底的に行われるべきだと思っています。

 ですから、処分が適正であったかどうか、そういうことについても、その選対委員会で議論になるでしょう。

 そのことについて今予断を持って語るべきではありませんが、要は自民党として国民にお願いするに足るかどうか、そういう基準は厳格に定めてやっていくべきものだと、選挙対策委員会にはその仕事をお願いしたい。そこにおいて国民の声を踏まえ、選挙対策委員の皆、各議員が議論をし、国民に納得していただける、そういう結論を得るべく力を尽くしてまいります。

周囲の理解得る努力が不足していた

 【記者】候補乱立の中、自身の強み、課題は。

 強みなんぞというおこがましいことを言うつもりはありませんが、国民の皆さま方のご期待というものを、高くいただいているということ。私が強いて強みという言える点があるとすれば、そういうことだと思っております。

 あるいは経験ということを申し上げました。必要なのは刷新〝感〟ではありません。感覚ではない。本当に刷新されたかどうかということを、そこにおいて過去どのようなことに取り組み、なぜうまくいかなかったのか、なぜ挫折をしたのか、それが刷新につながる。私は未来は歴史は過去の延長線上にあると思っています。刷新とともに反省、そういうことを併せてやっていきたいと思っております。

 そして弱みということがあるとすれば、いやあるとすればではない。あります。

 それはやはり実際に党を動かし、国政に携わる、そういう国会議員の皆さま方のご理解を得る努力を十分してこなかったということであります。私自身足らざる者でありますので、知らないことが多い。日本のために知るべきことは何かということに努力をし時間を割いてまいりました。

 その分、独りよがりや、多くの方々のご理解を得る努力の不足、そういうことがあったことは率直に認めるところであります。あとわずかの間、それがどれだけ乗り越えられるか、自らにも課題を課し、全力を尽くしてまいります。

 【記者】混戦模様の総裁選でどうやって支持を広げるのか。戦略は。

 推薦人の方を20人集めるって本当に大変なこと。今言われているように2桁の方が出られるってことになると、自民党議員の半分以上が誰かの推薦人になっているということになりますね。

 そうすると確かに議員票は分散するということは起こります。でも同じことは党員票においても起こるのでしょう。その中において、派閥から言われたからではない。派閥から言われたから支持をお願いするのではない、なぜこの人を選んだのかということを、支持してくださる方々に向かって、議員が、あるいは党員の方々が言えるような、そういうような環境をつくっていく。それが今度の総裁選だと思っています。

 1人1人が国民に向かって、有権者に向かって、おのれの考えを明らかにする。そのことによって支持は広がることができる。そういうような自分でありたいと思います。

中選挙区制も一つの選択肢だ

 【記者】選挙制度の見直しは訴えないのか。また選択的夫婦別姓と原発ゼロへの考えを聞きたい。

 やはり政治の根本は選挙制度だと思っています。ただ私の反省は、選挙制度を変えればうまくいくと思い込んだところにあった。そしてあの選挙制度改革。どちらかといえば、国会議員目線の選ばれる側目線の改革ではなかったかという反省を強く持っております。

 国民の方々がそうだねと思っていただけて、投票率が上がっていく、そういう選挙制度とは何なのかということであります。党を選ぶという選挙制度でした。今もそうです。

 しかしそれが政権を選ぶということ、どんな組み合わせがいいのかな。もちろんわれわれ自公が担わせていただきたいけれど、どういうような政権を選ぶことができるかということ、そして同じ党でもいろんな人がいます。

 この人もいいが、あの人もいいなというような、一種の多様性と言うべきかもしれません。そういうような有権者の視点から見た選挙制度ということを考えていくべきだと思います。

 いくつも案はありますが、私は中選挙区連記制というのも一つの選択肢だと思っています。ただこれは自民党の中だけで決められるものではない。かつて小選挙区に移行するときにどれだけのエネルギーを使ったか、どんな国民的議論があったか。もう一度それを問いたいと思っています。

 私は選択的に姓を選べるというのはあるべきだと思っています。それは男性であれ女性であれ、姓が選べないということによってつらい思いをしている、不利益を受けている、そういうことは解消されねばならないと思っています。同姓でいいんだよっていう方は同姓でいい。当然です。しかしながら、別姓にならないことでいろいろな不利益、権利の侵害、制度として、それは解消されるべきものです。

 原発はゼロに近づけていく努力は最大限いたします。それは再生可能エネルギー、太陽光であり風力ですが、私は小水力、そして地熱、こういう可能性を最大限引き出していくことによって、原発のウエートは減らしていくことができると思っています。

 私は単に原発減らせっていうことを叫ぶだけではなくて、そのための方途を最大限に活用するということによって実現するものだと、このように考えております。

 【記者】党員票を獲得するために、どうやって地方の期待を高めるのか。

 それは危機感は常に持っております。長い間上位にいたということで安心することはありません。常に危機感を持っております。

 これからひと月以上あります。その間に党のあり方、政治と金、そして政策、それを本当にうわべの言葉じゃなくて、1人1人の方々の心に響くような、そういう訴えをすることによってのみ、ご支持を広げることができると、そういう努力を怠って支持を広げることは絶対にできない。そのように考えております。

 【記者】農水相の経験もある。食料自給率の政策について、現政権との違いは。可処分所得や生産性向上の根幹にあるのが食と農だと話されたが、政策にどのように反映するのか。

 私は現政権も一生懸命取り組んできたと思っております。私も党の会議あるいは委員会等で自分の意見は申し上げてまいりました。私は農水政務次官も副大臣も大臣も務めましたが、自給率が上がらなかった。このことに誰も責任を取っていない。

 これは極めて問題だと思っています。どんなに立派な兵器をそろえても食がなければ専守防衛なんてできないということです。そして農林水産業に最も恵まれたわが国が、その持てる力を最大限に発揮してこなかった。これは国民に対してのみならず、世界に対して申し訳ないことだったと思っています。

 日本国民の食料の安全を確保すると同時に、世界の食料の安全にも貢献する。そういう日本の農林水産業であらねばなりません。わが国ならそれができるということです。

 ここにおいてはスマート農業であり、スマート林業であり、スマート水産業であり、そういうものを最大限に活用することによって、その実現は可能になるはずであります。

 そのことについては、農業者の方々、漁業者の方々、林業者の方々、そういう方々の正面に向き合いながら、国家の安全保障の一環として、農林水産業を捉える。そして、地方に雇用と所得、そして地方に安全と安心、このために、農林水産業の持てる力は最大限に発揮をさせる、それは国家の責任です。そのことに私は力を注いでまいります。

総選挙は可能な限り早く

 【記者】衆院解散総選挙について、早ければいつでも行われるべきとお考えか。

 これは何月何日ということを今申し上げる段階にはございません。あるいは参議院岩手選挙区の補欠選挙との関係もございます。そこは技術的なお話ですが、可能な限り早くということで、それは近いうちとかそういうような話ではなくてですね、技術的に可能であれば最も早い時期ということです。

 ただしそのためには、岸田政権が衆参の本会議の質疑の後、解散に踏み切られたと記憶をいたしております。できればこれ総理大臣だけでやるものではございませんので、全閣僚出席型の予算委員会というものを一通りやって、この政権は何を考えているのか、何を目指そうとしているのかということが、国民の皆さま方に示せたその段階で可能な限り早く信は問いたいと、私はそのように考えます。

 【記者】石破氏は本に、総理になるときには天命が下るんだと書いていた。運命の兆しは見えているのか。

 天は努力をしたものしか助けないということだと思っています。人事を尽くして天命を待つというのはそういうことだと思っています。

 なおなお努力は足りない、なおなお人事は尽くせていない。その後に天命は下るものであって、今兆しが見えているなどという、そういうおこがましいことがあるつもりは全くございません。

 【記者】会場に多くの支援者が集まっている。地元の支援者に対する思いは。

 38年間も順風満帆だったことはほとんどない。最初のときは本当に苦しい選挙だった。2回目もそうだった。自民党を出たこともある。自民党に戻った、あるいは党の方針に造反したこともある。総理大臣に直言をして不興を買ったことも何度もある。そういう厳しい38年間を最初から最後まで支えていただいたことは言葉に尽くせないってのはこういうことだと思います。これ以上の感謝はありません。

 そして今ここに大勢の方々がお越しですが、もうここにはおられなくなってしまった方、違う世界に旅立っていかれた方、大勢いらっしゃいます。そういう方も含めて、本当にこれ以上ないありがたいなという感謝の思いを持っております。

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