将棋界の八大タイトルで、最も歴史がある「名人戦」の7番勝負第3局が13、14の両日、高槻市で初めて指される。市では将棋を通じたまちづくりを進めており、注目の頂上決戦を前に地元が活気づいている。大一番に市は「普及や地域活性化につなげたい」と、歴史に残る名勝負に期待を寄せる。
今シリーズは、4連覇を狙う渡辺明名人(39)に最年少七冠を目指す藤井聡太竜王(20)=棋王・王将・棋聖・王位・叡王と合わせ六冠=が挑む。第1、2局は藤井竜王が連勝して先行する形だ。
高い関心
旅館で指されることが多い番勝負だが、今回は3月に完成した高槻城公園芸術文化劇場。クラシックコンサートや狂言と並ぶこけら落としとして実現した。
両日の大盤解説会は、1月にあった王将戦の6倍に当たる各日1500人に定員を増枠したところ、勝敗が決まる2日目には4月までに定員の9割を超える応募があった。さらに当日も募集を続ける。
両対局者を迎える12日の前夜祭には定員90人に対して806人、そして、対象を市民に限定した5分間の「観戦」は封じ手の開封に立ち会えるとあって定員5人に倍率40倍超の201人が応募するなど関心が高い。
特別仕様も
人気にあやかり、商業施設もにぎわいに一役買う。
JR高槻駅前の松坂屋高槻店は、公式キャラクター「さくらパンダ」が頭上に将棋の駒を載せたデザインを掲示。4階のジュンク堂書店は関連書棚を従来の3倍に拡張して小説や漫画、戦術書など千冊を常設し、名人戦の紹介を兼ねた特設ブースも設けた。来秋には近くで関西将棋会館が完成予定で、ジュンク堂の神谷隆店長(41)は「店内外でイベントを継続する。ファンやこれから始めようという人にもPRしたい」と意気込む。
番勝負で注目される、対局者に差し入れる“勝負めし”は初めて公募。自薦、他薦問わずメニューを募ったところスイーツに80、ランチに87の応募があり、選考で各12品に絞った。
最大限のおもてなし
市は18年、自治体として初めて普及・啓発に関する包括連携協定を日本将棋連盟と結んでおり、活況の背景には将棋という伝統文化をツールにしたまちづくりの仕掛けがある。
市将棋のまち推進課の中谷太一さん(44)は、両対局者や来場者に「最大限のおもてなしをさせていただきたいし、良い開催地だったなと思ってもらえれば」と力を入れている。