陽春インタビュー2023 分譲マンションの建設を通じ潤いのある街並みづくりを リバー産業 河 啓一 社長

建設業界のスターバックスを目指す

 分譲マンションの建設を通じて、自然環境と人との共生を目指した、潤いのある街並みづくりを進めています。この基本理念は創業以来、変わりません。時代の変化に対応しながら、当社のマンションブランド「リバーガーデン」ならではの特色を生かし、入居者だけでなく、周辺住民にも喜んでもらえるようなマンション建設を進めています。

 そうした中で、現在、力を入れているのが、瑕疵(かし)をゼロに近くしていくこと。当社では自社一貫体制(用地の取得↓企画開発↓地質調査↓設計・施工↓工程ごとの作業をチェックする検査↓販売↓アフター)を確立し、建設期間の短縮や中間コストの削減につなげていますが、工事の過程で思わぬ不都合が生じることもあります。その場合、全力で即座に対応しています。

 お客さまからクレームがあった場合には、「心を売る営業」をモットーに、誠実さをファーストに対応します。「ピンチの時は、チャンス」ととらえ、誠実な対応で、逆に好感度を持ってもらえるような関係を築いていきたい、と考えています。

 労働環境の改善にも力を入れています。建設業界は、前近代的なことが多く、朝が早く、休暇が少ない。現場は冷暖房がない場合も多く、仕事内容の割には、年収が低いのが現状です。そのため、建設業を目指す若者が減っており、現在は3割が55歳以上と高年齢化が進んでいます。

 こうした建設業界の現状を打破していきたいと考えており、海外出身者や女性従事者を他の従事者と同じように公平に評価。待遇面でも日本人と差がないようにしており、外国人や女性の仕事への意欲向上につなげ、早期に戦力となるようにしています。こうした取り組みによって、雇用の国際化が広がっていくような役割も果たしていきたい。

 さらにこの春には初任給を建築職と営業職の大学卒で30万円にしました。夢と希望に満ちあふれた若者が入社してくれることを期待しています。

 建設現場では、細分化されている職人(大工、左官、土工など)との一体化を図っていくことが大切です。活気あふれる現場にしていくためには、お互いを認め、尊敬し合うことが重要で、当社の従業員は職人の皆さんに対し、お互い「さん」付けで呼ぶようにしており、対等目線で、コミュニケーションをとるようにしています。同じ目標に向かって仕事をする「仲間」という意識を高めることで、品質の向上につながっていくと思います。

 マンション建設について、自然環境と人との共生の重要性は冒頭でも触れましたが、土地・建物と自然との融合を図るために、人が感じる緑を増やすことによって、安らぎを感じてもらえるように努めています。

 この発想から考え出したのが緑視率です。平面(図面上)の緑化率でなく、自動車や歩行者からの人の目線を基本にした、視覚に入る緑の量(緑視率)を重視しており、現在ある借景を活用しながら、自然豊かな潤いのある生活環境を生み出すように工夫を凝らしています。

 国土交通省の調べによると、緑視率が25%以上になると人は「緑が多い」と感じ始めるようですが、JRユニバーサルシティ駅前の「リバーガーデンシティ」の調査地点では86・0%の緑視率を記録しています。私が緑視率の言葉を使い始めて三十数年になりますが、他社に先駆けて取り組んだパイオニアとして誇りを感じています。

 このほか商品力アップに向けて知恵を絞っており、週刊ダイヤモンド(2021年8月21日号)では、「リバーガーデン福島」が売買坪単価騰落率ランキング(大阪市内)で1位にランクされました。将来財産に対する当社の取り組みが評価されたものとして、うれしく思っています。

 今後については「建設業界のスターバックス」を目指していきたい。「人々の心を豊かで活力あるものにするために」を企業理念に、シアトルの小企業から世界的な企業に成長したスターバックスは、顧客ファーストの従業員教育と訓練を行い、どの店でも同じように高品質のコーヒーが楽しめ、ゆったりとした店内で心を癒やすことができます。接客もおもてなしの心が行き届いています。

 スターバックスを見習って、IQよりEQ(心の知能指数)の高い社員を育成していきたい、と考えており、当社も教育システムを充実させ、毎年、給与を上げていけるような企業にしていけるように、汗を流していきます。(聞き手は猪口隆)

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 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響などもあり、日本経済は成長軌道に乗り切れない状況が続いているが、大型連休では人の流れが戻り明るい兆しも見られる。関西の企業・団体のトップリーダーたちも、今年の干支(えと)・卯(うさぎ)の運気にあやかり「前に跳び跳ね、飛躍の年にしたい」と意欲を見せる。そうした中から3人を紹介する。

河 啓一 氏
 全国展開の大手デベロッパーに伍(ご)して独自の戦略を打ち出し、「現場主義」に基づいたアイデアと行動力に多くの人が一目を置く。現場へは自ら作業着姿で行き、職人たちに声をかけ、励ます。衛生面や収入面の改善などに気を配り、シャワーを完備したりしている。社会貢献活動にも熱心で、大阪のイルミネーションや子どもの貧困対策推進の基金に寄付しているほか、マンションを周辺住民に災害(津波など)避難ビルとして一部開放したり、「なんばセントラルプラザリバーガーデン」では隣接の駅前広場を整備し、市民に喜ばれている。紺綬褒章を16回(法人として14回、個人として2回)受章している。85歳。

【リバー産業株式会社】
■本  社 大阪府岸和田市沼町2番1号
■大阪本店 大阪市中央区久太郎町4―1―3大阪御堂筋ビル2階(旧伊藤忠ビル)
■電話番号 06(6282)0101

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