【逍遥の記(27)】詩人そのもののようでいて「詩人」を疑い続けた人

 孤独を見つめて歌った谷川俊太郎さん

  •  谷川俊太郎さんの著作。詩だけでなく、絵本や翻訳も数多く手がけた
  •  詩を朗読する谷川俊太郎さん=2015年
  •  漫画「ピーナッツ」翻訳40年で、スヌーピーから感謝状を受けた谷川俊太郎さん(左)=2007年、東京都内のホテル
  •  谷川俊太郎さん=2021年12月

 詩人の谷川俊太郎さんが亡くなった。92歳、老衰だという。

 愛読してきた詩人だけれど、大きな衝撃があるかといわれると、そうでもない。どこかこの世の人ではないような気がしていたせいかもしれない。

 自分の感性や発想の中に、というより体の一部に、谷川さんの言葉が入っているように感じる。だから生死はあまり関係ないのだろうか。

 谷川さんの言葉には幼いころから触れ続けてきた。「鉄腕アトム」の主題歌、漫画「ピーナッツ」シリーズやレオ・レオニの絵本の翻訳でも親しみ、10代後半からは彼の詩集を求めて読んだ。

 30代で文芸担当になり、本人と会えるようになったのは、二十数年前だ。

 詩の会合や朗読会などで見るときの彼は仙人のようであり、無邪気な子どものようでもあった。詩人という抽象的な存在に思えることも多かった。小柄な人で、Tシャツ姿ですっくと立ち、平明だが深い詩の言葉を淡々と吐き出し、聴衆を遠い世界に連れていった。

 ■青空

 長いインタビューをしたことがあるのは1度だけで、2004年暮れだった。カメラマンと同僚と3人で車に乗り、会社を出た。事故でもあったのか道が混んでいて、途中から車がほとんど動かなくなった。...

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