“笑う門には福来る”。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う対談シリーズの9人目は、舞台俳優や歌手として精力的に活躍する川﨑麻世さん。
叱るということは愛情(川﨑)
努力し続けることが板に付いている(福盛)
福盛 アイドルを経てミュージカル俳優として活躍しています。新しいステージへ挑戦したきっかけは。
川﨑 12歳の時にテレビの素人参加番組で優勝したがことがきっかけで、ジャニーズ事務所にスカウトされました。当時からジャニー喜多川さんは、ジャニーズのアイドルが、将来的には世界的に通用するエンタテイナーになって欲しいと考えていた。僕も舞台を含め幅広く活躍できるタレントに育てようと、色々なものを見せていただきました。また、70年代はアイドルよりも、ニューミュージックが目立っていた時代です。こうした背景から次のステップを探して、劇団四季の「キャッツ」のオーディションに挑戦して合格することができました。
福盛 向上心の原動力はどこにあるのでしょうか。
川﨑 車に喩えるなら前進ばかりしてきました。ニュートラルに入れるのがもったいないというか。気持ち的にも、当時のアイドルは、世間に追い立てられている感覚がありました。「70年代のアイドルはその程度か!?」と。どんどん日本の芸能界に煽られて(笑)。だったら、誰も走っていない道を進んでやる!と、ブロードウェイをめざしたのです。若かったからこそできたのでしょう。1987年にはミュージカル「スターライトエクスプレス」のワールドツアーにも出演。日本・オーストラリア公演では、初の日本人キャストとして参加しました。
福盛 印象に残っている苦労や、支えてくれた人は。
川﨑 77年に歌手デビューしましたが、とにかく新人賞のトップが獲れなくて苦労しました。トップ以外は価値がないと、ほかの賞はプロフィールにも書かなかったぐらいで。そんな時、ジャニー喜多川さんが「ユーね、その程度のことは取るに足らないことだよ。挫折が人間を強くするんだ。乗り越えた壁を振り返ったら、意外と低いものだよ」と、声をかけてくれました。未だにそういう気持ちで頑張っています。
福盛 舞台「ある家族―そこにあるもの―」では演出と音楽も担当されました。ここでもチャレンジングスピリットが発揮されています。
川﨑 とにかく行動に移してみると、意外とすぐにできるものです。僕は楽器ができませんが、メロディを思いついたら、空港でもタクシー内でもどこでも、オーディオメモに鼻歌を録音します。これをピアノ担当に譜面に起こしてもらい、ミュージカルを作っていく。これなら楽器が未経験でも作曲できます。「思ったらやる!」 が、モットーです。
福盛 努力し続けることが板に付いているように感じます。
川﨑 年齢も還暦という節目を迎えて、舞台や歌以外にも、これまでできなかったことをやろうと考えています。新しい壁を乗り越え続ける。常にそういう毎日を過ごしたいですね。
福盛 30年間子どもたちと関わってきましたが、諦めるハードルが低くなっている傾向にあります。モチベーションの維持が悩ましいです。
川﨑 書店にも、「やりたくないことは、しなくてもいい」という論調のタイトルが並ぶ。今の人たちは本当にそれでいいのかな。昔の芸能界では、本当に厳しく育てていた。でも、叱ることは愛情だとわかっていたので、受け入れられたのです。強く叱責されても、その後に許しがあるから、また頑張ろうという気持ちになれる。指摘してくれる人間をなくしたら成長できない、と教育されてきました。僕も若い役者を演出する時は、ダメ出しが多い。その人を良く見せたいから、自分が学んできたことを少しでも教えてあげたいのですが、あまり聞いてくれません(笑)。
福盛 ネットの掲示板やSNSに振り回される傾向もあります。
川﨑 ネットの書き込みはアドバイスではないですよね。一方で、現代はそうした言葉が世間の声になっている。ネットにはこう書かれていますと、口を揃える。大切なのは、なるべく近い人に見てもらって感想を聞くこと。勉強でも、いい点が取れて親に褒められたら嬉しいじゃないですか。子どもは褒められるために勉強している面もある。きちんと認めてあげて、失敗はダメなことではなく成長のための一つの過程だと教えてあげたら、頑張れる子が育つのではないでしょうか。
福盛 すごく親孝行もされているそうですね。
川﨑 今まで育ててくれたこと、大病もせず、この歳まで仕事ができる強い体に生んでくれたことに対する感謝の気持ちしかありません。親を大事にできない人間は、誰も大切にすることができないと考えています。母とは毎日ビデオ通話をしますし、朝出かけて帰ってくるまで防犯カメラでも見守ります。会った時には必ずハグをする。日本人は恥ずかしがりますけど、親も嬉しいのではないでしょうか。
福盛 人の育成から挑戦する姿勢まで、参考になるお話をありがとうございました。
(司会・写真は上部武宏、記事は岩崎甚)
かわさき・まよ
1963年、大阪府枚方市出身。歌手・俳優として活躍するほか、朗読ミュージカル『ある家族-そこにあるもの-』では演出、音楽も手掛ける。2023年配信 Netflix映画『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』、同年7月7日全国ロードショー 映画「ヒッチハイク」ジョージ役で出演決定。枚方市PR大使、川崎市産業親善大使。
ふくもり・としゆき
1973年、大阪市出身。大学在学中の19歳で起業。96年に新教育総合研究会「個別指導キャンパス」(大阪市北区)を設立。個別指導塾を全国約350教室で展開している。第21回稲盛経営者賞第1位、第1回大阪府男女いきいき事業者表彰優秀賞、紺綬褒章など受賞多数。