30年以上にわたって続いた、東部消防局の職員の手描きイラストカレンダーの制作が、2025年版の34作品目で幕を閉じる。多忙な業務で制作にかける時間を取ることが難しくなったためで、同局は住民が明るく健やかな新年が迎えられるようにと最後の作品に願いを込める。
同消防局のカレンダー作りは子どもたちに親しみやすい消防を知ってほしいと、1992年版を制作したのが始まり。子ども向けに千枚作って配布したが、手描きイラストのカレンダーは鳥取県内の消防局で唯一の取り組みで、大人にも好評を得て毎年、増刷を繰り返してきた。
当初、1人の消防士が色付けまで担当していたが、近年は4、5人が約半年がかりで仕上げている。一方で、同消防局管内の年間救急出動件数は92年の4555件から、2023年には1万2235件に急増し、業務の合間に作業時間を確保することが難しくなっていた。
消防車両の写真などを使って制作を続けることも検討したが、同消防局らしい独自性が維持できないと、終了を決めた。来年度以降は新しい取り組みを考えていくという。
最後となるカレンダーは「緊急消防援助隊」をテーマに、消防車やはしご車など誰もが知る車両から、全国で数台の水陸両用車両など緊急消防援助隊のさまざまな部隊が中国・四国地方に集まる様子を描いた。表情にこだわった消防士や各地の名物、動物なども細かく描き込まれている。
カレンダープロジェクトのリーダーを務めた予防課の森本慎さん(35)は「住民が笑顔で元気に過ごせるようにと思いを込めた。火災予防のお守りにしてもらいたい」と話す。カレンダーは同消防局や管内各署で受け取れる。