日雇い労働者の街・大阪市西成区のあいりん地区(通称・釜ケ崎)で長年にわたりシャッターを切り続けてきた鳥取県米子市の写真家、庄司丈太郎さん(76)が西成区役所の臣永正廣区長を表敬訪問した。将来、区のアーカイブ資料として展示されることを願い、最新の写真集を区長に手渡した。
12日に訪問。庄司さんは昨年、1968から約半世紀にわたり撮り続けた写真の中から約200枚をまとめた『貧しかったが、燃えていた 釜ケ崎で生きる人々 昭和ブルース編』(解放出版社)を出版した。今回の訪問は、庄司さんと旧知の仲である生根(いくね)神社(同区)の吉見友伸宮司(54)の紹介で実現。写真集のデザインに携わった東京のブックデザイナーが、たまたま娘の吉見友希さん(28)だったという縁もあった。
「西成は第二のふるさと」という庄司さんは、写真集に「傍観者でなく人を敬う西成の日雇い労働者兼写真を愛する者として」の言葉とサインを記入。現場で働きながら、労働者仲間や子どもたちと信頼関係を築いて撮影していた当時の思い出を交えて歓談した。今の子どもたちの遊ぶ場所がない現状を憂いつつ「当時は公園で日雇い労働者や手配師ら多くの大人が子どもたちの遊び相手になり『花いちもんめ』や綱引きをやるなど、本当に和気あいあいとした世界があった」と懐かしんだ。
臣永区長は「古きよき元気な西成がそのまま写っており、いまでも元気づけられる」と話し、吉見宮司は「西成のまとまった記録写真は貴重。この写真集が後世に残る資料となればありがたい」と期待を込めた。