潮騒 2023.5.21

被爆地・広島に集まった先進7カ国(G7)の首脳に読んでほしい本がある。広島市教育委員会が市立の小中高校を対象にした「平和教育プログラム」の教材から削除した漫画「はだしのゲン」だ◆引用されていたのは、ゲンたちが妊娠している母親のために浪曲のまねをしてお金を稼いだり、栄養不足の母親に食べさせようと池でコイを釣ったりする場面で、削除の理由は「漫画の場面だけでは被爆の実相は伝わりにくい」からだという◆大阪市内の小さな書店で同書の1、2巻を買った。確かに前述の場面からだけでは、被爆の実相は分からないかも知れない。しかし、全10巻中の2巻を読んだだけでも戦争の悲惨さ、原爆のむごたらしさが十分に伝わってくる内容だ。限界状況の中で、家族を守ろうとたくましく生きるゲンの明るさが重いテーマの中で救いになっている。久しぶりに、漫画を読んで涙を流したり、笑ったりした◆米英仏の核保有国を含む各国首脳に、原爆が投下された地域の人々がどういう状況になるのか強いイメージを持ってもらうことは大事であり、原爆資料館の訪問は一つの成果だろう◆世界の子どもたちに「はだしのゲン」を読んでもらえれば、「核なき世界」へ一歩近づけるのではないだろうか。(木)

同じカテゴリーの記事