目的外の魚が釣れたことを「外道が釣れた」という。外道のなかには、その釣りに行くと必ず一定の確率で交じるおなじみのものから、初めて見た、釣ったという珍魚まである。この稿を書くに当たって電話で聞き取りをすると、釣りなら何でも一通りというあのO名人ですら、あまり思い当たらないとおっしゃっていた。しかしこの話の中でOさんから面白い話を聞いた。
「珍しい魚という質問の意図とは違いますが、意外な話でしたらあります。去年の3月、古座川上流へアマゴ釣りに行きました。夕方、釣り終わって水際でアマゴの内臓を出しました。その捨てた内臓が流れる下流でなにやら、ゆらりと…。よく見ると60センチに余るオオサンショウウオでした」
「アマゴの内臓が流れて、ゆらりとゆっくり近づいて行くのですが、それが目の前までくるとビュッと首だけ電光石火の動きです。試しに小型のアマゴを手で持って行きましたが、さすがにそれには食いつきませんでした。でも、欲しそうな顔をしていたのでそのまま流してやると50センチほど流れたらパクリ。それが面白くて、ついつい苦労して釣ったアマゴを3尾もサービスしてしまいました」
オオサンショウウオを珍魚というかはさておいて、アマゴの内臓を針につけて、それなりの道具立てで釣れば、天然記念物でさえ釣れないことはない(もちろん罪になる)。しかし、その映像を想像すると、魚の針掛かりはそんな感じがしないのに、オオサンショウウオが暴れている姿は残酷に感じてしまう。