潮騒 2023.5.28

 残念ながら核軍縮で世界をけん引するリーダーは現れなかった。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の声明は「核兵器のない世界」を究極の目標としつつ、「現実的かつ実践的で責任あるアプローチを取る」とし、G7メンバーである米英仏の核兵器保有、米管理下で有事に核弾頭を譲り受ける独伊の核共有、米国の「核の傘」の下にいる日本の現状を認め、核兵器廃絶への道筋は示せなかった◆「核兵器のない世界」を実現するには、核依存国が核からの脱却を進めるしかない。その最初の一歩を踏み出す国が「国際社会において、名誉ある地位」を占め、その指導者が世界のリーダーとして歴史に名を残すのではないか◆リーダーのスケールは守ろうとしているものの大きさで決まる。各国トップが自国を守ろうとするのは当然だが、核抑止による均衡が破られないという保証はなく、人類全体が危機にさらされているからこそ「核兵器のない世界」が求められるのではないのか◆「核兵器のない世界」を目指すとしながら、核兵器禁止条約に背を向け、「核共有」や「核保有」に食指が動くようでは世界から信頼は得られまい◆「現実的」という言葉で理想を縛る指導者に、世界を変えるという意気込みは見えなかった。(木)

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