関西圏で開かれたクラシック音楽の公演の中から優れた個人・団体を顕彰する「音楽クリティック・クラブ賞」(音楽クリティック・クラブ主催)が発表された。2022年度は、本賞に住友生命いずみホールと指揮の山田和樹さんが行った「シューベルト交響曲全曲演奏会」(9月)、奨励賞にはチェロの北口大輔さんによる「センチュリーリサイタルシリーズ」(6月)がそれぞれ選ばれた。
音楽クリティック・クラブは関西で活動している音楽評論家で構成(2022年度は10人)し、1962年の第1回以来毎年各賞を贈賞している。今回は2021年12月~22年12月に開かれた演奏会が選考対象となった。
本賞の「シューベルト交響曲全曲演奏会」は、交響曲作家としてのシューベルトに光を当てたもので、住友生命いずみホールとホール音楽アドバイザーの堀朋平さんを中心に企画された演奏会。全交響曲を番号順ではなく四つのテーマに分けて関連作品なども織り交ぜて構成し、演奏には在阪の4オケを起用した。
「全曲の指揮を担った山田和樹氏は持ち味の異なるこれらのオーケストラから最高度の演奏を引き出し、かつ新鮮なシューベルト像の提示に貢献した。企画と実演が高い次元で結びついたシリーズ公演であり、関西の音楽文化の一つの水準を示す成果となった」と評価された。
奨励賞の北口さんは日本センチュリー交響楽団の首席チェロ奏者で、ソリストとしても多彩な音楽活動を展開する。「センチュリーリサイタルシリーズ」では自ら無伴奏チェロ用に編曲したJ.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」全曲を演奏。3年を要して完成させたという世界でも類のないチェロ編曲版を20年に大阪で初演して以来再演を重ね、編曲に磨きをかけてきた。
今公演では「演奏自体もひときわ磨きがかかったことが伺え、チェロ1丁とは思えぬほどの表現の多様性や音色の多彩さ、多声的書法の立体感、そして何より、チェンバロとは異なった息長く歌う楽器としてのチェロの美点が最大限に引き出されていた」と評価された。