カーボンニュートラルの達成に向けて、既存住宅の窓の断熱改修を支援する政府補助金制度がこのほど始まり、「窓断熱市場」に注目が集まっている。事業に1千億円の予算が設定され、物価高や光熱費が上昇する中で引き合いが高まっている。室内にはトイレや浴室など温度差によるヒートショックや熱中症のリスクも潜んでおり、メーカーは「住まいの中で最も熱の出入りが多い場所が、窓」と指摘。身体への負担を軽減するため、窓や壁の構造を見直す「断熱」の必要性を説いている。
2020年3月にオープンした、大阪・南港にある住宅設備大手リクシル(東京)のショールーム「住まいStudio大阪」は、住宅の断熱効果を肌で実感できる施設。新型コロナウイルス禍を経て、リフォームを検討する人や施工業者の予約が相次いでいる。
ショールームは、約670平方メートルに4棟の住宅設備を置き、外気0度の巨大な“冷蔵庫”に見立てて「年中冬」を再現しているのが特徴。断熱効率について、基準の異なる「昔の家(1980年基準)」「リフォーム後の家(2016年基準)」と、断熱性能を高めた「これからの家」を比較し、室内の温度むらや足元の冷えなどが改善される状況をサーモカメラを使って可視化している。
経済産業省が手がける「先進的窓リノベ事業」は、窓の断熱効能を高めることによる冷暖房費負担の軽減や家庭からのCO2排出削減、省エネ性能の確保が目的で、改修工事の内容に応じて1戸あたり5万~200万円の補助金を交付。今年3月末に申請が始まり、今月14日時点で金額は全体の30%に上っている。
このうち内窓(インプラス)は、設置することで生まれる空気層が断熱とともに防音効果も発揮する特長がある。広報によると、同社では現在、リフォーム窓の分野で前年比で3倍を受注している。
国土交通省の審議会資料によると、約5千万戸ある既存住宅のうち、現行基準に当たる高断熱性能の住宅は1割にとどまっている。同社の担当者は「9割が省エネ基準を満たしていないことになり、ここに市場のポテンシャルがある」と展望している。