十数年来、置き去りになっていた大阪・十三の旧大阪市淀川区役所跡地一帯の再開発が始動している。高層マンションに市立図書館が入り、地元の交流空間や学校も一体整備する計画だ。開発者は「十三を西宮北口と争う“住みたいまちランキング”の上位に」と展望。2026年春の完成に向け、屈指の“下町”がどう生まれ変わるのだろうか。
「街は人が住むことで活気が出る。十三を“住む街”にする起爆剤とし、阪急沿線の核として育てていきたい」-。分譲マンション「ジオタワー大阪十三」の公式サイト開設に合わせ、阪急阪神不動産(同市北区)の古谷慎一取締役が記者会見で語気を強めた。
交通の結節点
用地は阪急電鉄十三駅から徒歩3分、十三東1丁目の総敷地面積8900平方メートル。このうち「ジオ-」は地上39階建て、総戸数は712戸で、1~3階にスーパーや図書館、保育・学童施設が入居する。隣接地には「履正社」(同市淀川区)が運営する医療系専門学校や地域も利用可能な公共空間を整備予定だ。
着目したのは、大阪・梅田まで1駅、阪急各路線が結節する利便性だ。大阪-十三を結ぶ「なにわ筋連絡線」、十三-新大阪間の「新大阪連絡線」という二つの新線構想もあり、開通すれば新大阪や関西空港へのアクセスが向上する。
また、新大阪は昨年10月、規制緩和や税制特例が受けられる「都市再生緊急整備区域」に指定。府や市は近接する十三や淡路駅周辺を含む一帯で20~30年先を見据えたまちづくりを進めている。淀川河川敷にも近く、ここでは25年の大阪・関西万博に向けて船着き場の設置計画もある。
ターニングポイント
「長らく手付かずだったが、地元の悲願でもある図書館機能と新しい複合施設が建つ。ビジュアルも大きく変わり、ますます魅力あふれるまちになる」と歓迎するのは、大阪市の横山英幸市長だ。
区役所が策定した「淀川区将来ビジョン2025」によると、世帯数は24行政区最多だが「10代未満と30代が転出超過で、子育て世帯に住み続けたいと思ってもらえるまちづくりが課題」と分析している。
駅前にアーケード街、路地裏には「しょんべん横丁」と呼ばれる飲み屋街が並ぶ有数の繁華街として知られる十三。このエリアに、子育て世帯を呼び込もうというのだ。横山市長は「ターニングポイントになるのがこの再開発。国・府・市を挙げて新しい拠点の開発を進めていきたい」と活性化に期待を寄せる。