戦時中の1943年9月10日に発生した鳥取地震をテーマにした講演会が大阪市北区の鳥取県関西本部交流室であった。フリーライターで「鳥取地震犠牲者の慰霊碑建立をめざす会」(鳥取市)会長の橋本巌さん(82)=寝屋川市=が講師を務め、甚大な被害をもたらしながらも戦時下ゆえに報道されなかった震災の全容を解説した。
大阪鳥取県人会と同本部共催の月例講座「鳥取学出前講座」として15日に開いた。橋本さんは、当時の鳥取県特別高等警察(特高)が44年にまとめた部外秘の調査資料「鳥取県震災小誌」(82年復刻)などに沿って被害や震源地などを詳しく紹介。地震をもたらした鹿野、吉岡の二つ断層のうち、鹿野断層の痕跡が県指定天然記念物として現存していることにも触れた。記録写真も交えて「戦争最優先で、報道管制の下、救援や復興支援の体制が不十分だった」と、被災者に我慢を強いる厳しい状況であったことを伝えた。
また、これまで鳥取地震の慰霊碑がなかったことを受け、2021年に遺族などが中心に会を結成し、地震からちょうど80年の今年、建立のめどが立ったことを報告。16年の鳥取県中部地震や、近年、国内外で起きた主な震災を振り返りながら「過去と現在を知り、将来に備えたい」と呼びかけた。
聴講者の県人会員の中には鳥取地震の体験者も多く、質疑応答も兼ねて当時の記憶を語り合う場面もあった。