潮騒 2023.7.2

 大阪市中央区谷町に立派なオフィスビルがある。完成は1985年で外装は花こう岩張り。天井は高く落ち着いた雰囲気で、街のブランディングに一役買っている。繊維関連企業がオフィスビル業に進出し、「どうせやるならいいものを」と建設したビルが事業の柱に育った◆大阪市西成区の老舗理容店。客の顔を映す大きな鏡を開けると洗髪台が現れる。店主の祖父が購入したもので、ゆったりと座り心地のいい椅子とセットで、目にすることがほとんどなくなったという。同店に遠方からのリピーターが多い一要因だろう◆いいものを長く使うことはコスト削減、継続的集客につながる。付加価値の高い商品を適正価格で買う、買い先の企業が社員に還元する、消費が活発になる、という循環ができれば経済にも好影響が生まれる◆では、あまりに安い商品やサービスを提供している企業で、社員の生活は成り立っているのだろうか。非正規雇用でコストを抑えれば、その企業の利益は増すだろうが、多くの企業が同じ事をすれば個人消費は落ち込む。人手不足の過重労働で事故が起こるかもしれない◆物価高の厳しい状況だが、商品選びの際に働く人の顔を想像することが、よりよい社会への一歩につながるのではないか。(木)

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