オーディオブックで健康に 柏原市と運営会社が連携協定 認知症予防にも効果期待

 本の内容を音声で楽しむことができる「オーディオブック」を健康づくりに活用しようと、柏原市は運営会社の「オトバンク」(東京)と包括連携協定を結んだ。オーディオブックが認知症予防に効果があるという研究もあり、催しを通じて知名度を上げていく考え。市は「無限の可能性がある。子育て支援や観光にも幅広く生かしたい」、企業側も「“聞き入る文化”を広げる第一歩として貢献したい」と展望している。 

 市は部局内に「健康づくり課」を置くなど「健康」をキーワードにまちづくりを進めており、市内には国内最高齢の巽フサさん(116)も暮らしている。市内にある関西福祉科学大の重森健太教授(早期認知症学)と同社が認知症予防に関する共同研究を進めていたことが協定締結のきっかけになった。

 6月29日に市役所で式典と記者会見があり、冨宅正浩市長が「オーディオブックは健康や認知症対策にとてつもないパワーを持っている。“究極のバリアフリー”を掲げる企業と協定を結べてうれしい」とあいさつ。オトバンクの上田渉会長は「シニア世代の需要が高まっている。自治体との連携は初の試みだが、住民に有意義な取り組みにしたい」と応じた。

 会見には、アニメ「ちびまる子ちゃん」の主人公・まる子役で知られ、2作品で読み手を務める声優のTARAKOさんと、愛用者代表として俳優の森尾由美さんも同席。「睡眠不足で小さい字を追うのがしんどい時に耳で聴いている。電車やトイレの中、どこでもその世界に入れるし、オトバンクはBGMのセンスも良い」とTARAKOさんが話せば、移動中に愛用している森尾さんは「耳から“風”や“におい”を感じられ、目よりもはるかに想像の世界が広がる。たくさんのジャンルがあり、読書離れしている人も自分に合った本を探してほしい」と期待を寄せた。

 同市は大和川流域にあり、奈良県とも接する自然豊かな土地柄で、協定の第1弾として、9月にオーディオブックとウオーキングを組み合わせた催しを予定している。

 【オーディオブック】 2019年に読書バリアフリー法が施行されて以降、高齢や病気、視覚障害など目で本を読むことが困難な人たちが利用できる読書形態の一つとして注目された。近現代や古典の文芸作品やライトノベル、新書など通常の電子書籍のように購入でき、近年はネット通販や出版大手も本格参入している。オトバンクは04年創業の草分けで、同社が運営する「audiobook.jp」は会員数250万人、1万5千タイトル以上が「聴き放題」に対応している。

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