「市政運営に関する情報は市民の財産」「市民に説明する責務が全うされるようにする」とうたう大阪市の公文書管理条例が有名無実化しているのではないか◆カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)の誘致に関し、大阪港湾局が情報公開請求に対して「不存在」と回答していたメール198通が見つかった。深刻なのは情報公開請求を受けた後にメールを削除しており、別の場所から見つかったことだ。都合の悪い文書を処分したと疑われても仕方のない状況で、同局は14日にメールを公開したが疑念が払拭されたとは言い難い◆メールはIR用地の賃料を決めるのに必要な不動産鑑定を業者に依頼する際に、鑑定の条件などについてやりとりした文書。鑑定を巡っては、評価額が依頼した4社中3社で一致し、IR誘致を考慮せずに鑑定したことがIR事業者の不当な優遇ではないかと住民訴訟が行われている◆焦点は「IR考慮外」を市側が指示したかどうか。同局は否定するが、現在の説明では一鑑定業者の要望に添って一担当者が提案したことになる◆公文書管理の要諦は意思決定過程を検証可能にすることであり、いつ、誰が、どういう理由で、「IR考慮外」を指示したかを明確にすることが信頼回復に必要だ。(木)