「大阪市長選に立候補する」。１９９８年、関西の私立大であった講演の一幕。タレント上岡龍太郎さんの“出馬宣言”を鮮明に覚えている。立つべき時期を明言したかどうか定かではないが、２００８年の招致へ突き進む「大阪五輪」への言及もあったと記憶している◆大阪の無党派層を言い当てた「お笑い１００万票」という言葉が躍った時代。当時は盟友、横山ノック府知事の１期目でもあった◆あれから四半世紀。市長は、五輪招致を進めた磯村隆文氏から関淳一氏へ、旧民主党などが支援して関氏らを退けた平松邦夫氏、平松氏を破った橋下徹氏、後継の吉村洋文、松井一郎、横山英幸の各氏へと受け継がれた◆今、五輪の会場候補地だった夢洲（ゆめしま）を巡り、懸念が尽きない。開幕まで２年を切った２５年大阪・関西万博は「本当に間に合うのか」と建設業界から疑問符。３０年開業を想定するカジノを含む統合型リゾート（ＩＲ）に関しては、市の公文書管理を巡って市長が市議会で陳謝する事態を招いている◆２０００年の引退後、ほとんど公の場へ出ることがなかった上岡さん。「出馬」発言はノックさんに触発されたか、あるいはジョークだったか、今は確かめるすべはない。泉下では、現在の大阪をどう評価しているだろうか。（藤）
潮騒 ２０２３．７．１７
