少子高齢化が進展する中、兵庫県は5月から、婚活支援サービスを手がける「タメニー」(東京都品川区)と提携し、人工知能(AI)を活用したマッチングサービスをスタートさせた。なぜ行政が民業でも類似のサービスがある婚活支援に乗り出したのか。そこには人口減少への危機感があった。
2021年の統計によると、同県の人口は前年から3万4914人(0・64%)の減で、12年連続で減少している。県は「結婚から子育てまで希望がかなう兵庫をつくる」を重点目標とし、06年からひょうご出会い支援事業を開始。公益財団法人の「兵庫県青少年本部」に「ひょうご出会いサポートセンター」の業務を委託し、独身男女の出会いの場を提供してきた。
同センターでは有料会員型のお見合い事業と、無料会員型の出会いイベント事業を運営。スマートフォンでお見合い相手の検索、閲覧ができる「スマホ婚活」や、民間企業と提携した婚活イベントを開始したほか、なりすまし防止のための本人確認徹底など行政ならではの安全性を利点に事業を拡大してきた。
しかし現在、県内の婚姻数は低下傾向のまま。そこで、AIマッチングの導入に踏み切った。新システムでは、112問の「価値観診断」を実施し、その診断結果から毎月最大4人の異性をAIが自動で選ぶ。
県男女青少年課の永野雄士、田口智大の両氏は、新制度導入の狙いを「出会いの幅を広げたい」と説明。従来は、会員自身が相手の年齢や収入などの「求める条件」を定め、お見合い相手を探す方式だった。
しかし、「条件」だけでは「相性のいい相手」が必ずしも見つかるとは限らない。そこで価値観診断に基づくAIマッチングで、従来のシステムでは出会えなかった「相性のいい相手」を紹介し、出会いの幅を広げることを目指した。さらに担当者は「『自分から積極的に婚活をすることが苦手』な会員でももっと手軽に利用できるようになれば」と期待する。
同様の事業に取り組む「埼玉県婚活支援センター」では、18年に「タメニー」と提携し、AIマッチングを導入。AI紹介による成婚率は「全体の36%」との結果も得られている。
5月に開始した兵庫県でも関心は高く、「実際に交際につながった人もいる」と担当者。新規会員募集開始から既に多くの入会申し込みがあったそうで、「出会いや結婚に対する期待と思いが感じられる」と手応えを示す。