大阪・泉州を原産とする希少なナス、「馬場なす」と「貝塚澤茄子(なす)」の2品種が今夏、府の手がける「なにわの伝統野菜」に認証された。ともに「泉州水なす」が知られる貝塚市で採れる水ナスの一種で、文献などを通じて種の固有性、来歴が明らかとなった。地元農家が守り育ててきた“幻の野菜”が日の目を浴びることになり、生産者は「地域全体で盛り上げていきたい」と大歓迎している。
なにわの伝統野菜は2005年に始まった認証制度で、来歴や固有性の他におおむね100年前から栽培されていた事実などの基準を満たすことが条件。生産者や小売店がPRするのに有効で、これまでに毛馬胡瓜(きゅうり)や勝間南瓜(なんきん)、田辺大根などが認証。今回で20、21例目の野菜となる。
府などによると、馬場なすは、大正時代に泉州地域の山間部を中心に栽培された種で、通常の水ナスよりも細長く皮が薄い。実は柔らかく、甘みが強いのも特徴だ。代表の畠盛人さん(52)が一般社団法人の「馬場なすをつなぐ」を立ち上げるなど、貝塚市馬場地区の農家が種を守り続けており、地域内の計約20アールで栽培している。
一方、「貝塚澤茄子」も甘みがあり、巾着形なのが特徴。明治時代に泉州地域の大阪湾に面した浜側一帯で栽培され、その後は一時栽培が途絶えたが、昭和初期に伝わった新潟県の生産者から貝塚市の北野忠清さん(40)が苗を譲り受け、栽培が復活した経緯がある。現在は4アールほどで育てている。
5月中旬、府が2品目の追加認証を発表。定例の記者会見で吉村洋文知事が「大阪には豊かな食文化がある。注目が高まり、地域の活性化に寄与していけば」と期待を寄せた。これを受けて6月下旬には、畠さん、北野さんの2人が地元貝塚市役所を表敬訪問し、酒井了市長に追加認証を報告。今後のブランド化などを巡って意見交換した。
認証をきっかけに飲食店やバイヤー、消費者の反響は大きかったそう。「まずは知名度を上げて収量を増やしたい。ブランドを落とさないよう商品管理し、一人でも多くの人に食べてもらいたい」と畠さん。北野さんは「(2品種は)実の質の違いもあり、差別化すれば面白い。“ボージョレ・ヌーボー”のように『今年の水ナス解禁』といった形で売り出せれば」と展望している。
貝塚澤茄子は今年は7月中旬までで既に収穫を終了。馬場なすは、貝塚市の「かいづかいぶきヴィレッジ」をはじめ、直売所などで10月まで出荷を続ける。