「フェイクニュース」という言葉がネットでよく使われるようになったのは、2016年のアメリカ大統領選以降のことだ。トランプ前大統領が、記者会見で自らに批判的な報道を展開する米CNNテレビの記者を「おまえはフェイクニュースだ」と面罵したシーンは記憶に新しい。その頃は、日本のネット空間で最近のようにデマやフェイクニュースの脅威が語られることはまだ少なく、「フェイクニュース」という言葉自体も、どちらかと言えば政治的に異なる立場の者を攻撃する文脈で用いられている節があった。
だが、最近は多くの人が、デマやフェイクニュースが真に身近になったことを感じているようだ。総務省が行った「令和3年度 国内外における偽情報に関する意識調査」では、直近の1カ月の間にインターネット上のメディア(SNSやブログなど)でフェイクニュースを見かけた頻度が「毎日、またはほぼ毎日」「最低週1回」「月に数回」と答えた人が合計5割弱に達していた。調査が行われた2021年頃の時点で、フェイクニュースの存在はすっかり一般化していたわけだ。
それにもかかわらず、ネットでさまざまな情報を受容する市民はまだ、フェイクニュースやその脅威...