潮騒 2023.7.21

 9月から開設10年目に入る「ハルカス寄席」にベテラン落語家12人が加わり、広い年齢層の総勢35人で週2回の高座を回すことになった。3席1500円と手頃な同寄席は香盤(演者の序列)にこだわらず出順を組み、人気にも敏感。他の仕事との兼ね合いで飛び込み飛び出しもいとわない◆落語協会が仕切る大阪・繁昌亭や神戸・喜楽館はそうはいかない。高座は出順があり、先輩の舞台は聞いて学ぶ。出演も協会員で公平に振り分ける◆歌謡界や歌舞伎、演劇もほぼ同様で出番を終えた若手は「座長」と呼ばれるスターが退出するまで帰れない。朝はその反対で、先に来てお出迎え◆「ハルカス寄席」はこうした業界のルールにとらわれないから、若手も伸び伸び。同様に吉本興業の拠点・なんばグランド花月も出順を気にしない。大阪出身の人気コンビ「アインシュタイン」は、東京から戻って1日で3劇場8ステージをこなした。「飯食う暇無いスよ」と笑うが、観客本位で考えるとこれぞ願ったりだ◆コロナでネット配信が発達すればするほど「一度実演を見たい」のニーズが増す。舞台裏のしきたりにいつまでもとらわれていては観客の満足度は得られない。「守るためには変わらなければならない」という言葉もある。(畑)

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