「再起の秘訣」は感謝の気持ち

ネットワーキングステーション社長 佐藤 一男さん

きらめきびと

 「講演の依頼があると、まず数人の名前を挙げ、感謝の気持ちを述べる」。大阪産業創造館で開かれたセミナーでも、こう語り始めた。「私が新聞記事切り抜き業を始めた35年前、力になっていただいた方も会場にお見えです。当時、淀屋橋にあった事務所に始発電車で駆け付け、他の仕事があったにもかかわらずボランティアで私の仕事を手伝ってくれました…」。

 佐藤さんの仕事は早朝、新聞の朝刊各紙に目を通し、契約している企業に関連がある記事を切り抜き、閲覧しやすいように編集して各社の始業時間までに届けなければならない。担当部署との信頼関係をコツコツと積み重ねながら、仕事を軌道に乗せ、70歳の古希の誕生日には取引がある2社から祝電があった。「うれしかったです」と目を細める。

 だが、塾講師の仕事を辞め、起業した当時は苦労の連続。企業との契約が思うように進まず、自殺まで考えたこともあった。その時、妻の和美さんに気持ちを電話で伝えると「『何言ってるの』と私を元気づけるように言いました。家に帰り妻の寝顔を見て涙がぼろぼろと出ました」と振り返る。

 その後も大腸がんや脳梗塞、腹膜炎などの病魔に襲われながらも、家族や友人たちの励ましもあって、危機を脱出。その“再起の秘訣(ひけつ)”について「多くの人のおかげで仕事ができる。感謝の気持ちを忘れないこと」と語り続けている。東大阪市永和、71歳。

同じカテゴリーの記事