隅田川に面する東京都台東区蔵前。江戸幕府の米蔵が立ち並んだのが、町名の由来となった。明治期には、人形や文具の問屋街へと変化。近年ではクリエーターや個性派の店主が集まる、注目の街を歩いた。(共同通信=藤原朋子)
都営浅草線蔵前駅を出てすぐ、ジュエリーブランド「shinkai(シンカイ)」の蔵前本店をのぞいた。天然石など素材の持ち味を生かすデザインセンスが光る。デザイナーの真貝瑞季さんは「一つ一つの素材を、手でこねるように遊び、ぬくもりを引き出します」と語る。
特に一点物のパール作品は女性の心をつかみ、自身へのご褒美として購入する人が多いそうだ。店舗にはアトリエを併設。この日は、真貝さんが南洋真珠を工具で成形していた。機械とは異なるリズムで響く音が、心地よく聞こえた。
国際通りを西へ渡って進むと、カラフルなリュックが目に留まる。皮革製品の企画から販売まで行う「メッセージ」だ。「蔵前街歩きリュック」は牛革製のロングセラーで十数色から選べる。軽量で、サイドファスナーから中身を取り出せるなど、機能的だ。
蔵前に生まれ育った3代目社長・小川太一郎さんは「昭和期は問屋街だった。問屋が抜けて空いた建...