夏は、ふだんの生活から少し離れて自分の人生の「これまで」、そして「これから」を振り返る貴重な機会。そんな特別な季節の読書に、おすすめの一冊がある。
徳仁親王著『テムズとともに 英国の二年間』(紀伊国屋書店)。天皇陛下が1983年から1985年にかけて英国オックスフォード大学に留学された日々について記した、貴重な一冊。1993年に学習院教養新書として出版されたものが、学習院創立150周年の記念事業の一環として30年ぶりに復刊された。
2019年5月1日に第126代天皇に即位されてからの日々は、新型コロナウイルスの流行もあり、いろいろとご苦労があるものだったろう。そんな中、天皇陛下が常に国民に寄り添う姿勢を示されていることは、私たちが日頃報道などを通じて感じるところである。
昨年は、皇后陛下とともに、エリザベス女王の国葬のためにゆかりの深い英国を訪問された天皇陛下。『テムズとともに』には、若き日にかの地で結ばれた絆や出会われた経験が記されていて、読書経験として類いまれなものになっている。
若き日の陛下は、今日に比べればまだ制約の少ない活動をすることができた。それでも、当時から日本国を代表...