トットちゃんが受けた理想の教育 子どもの自主性に任せて「待つ」ことの大切さ

  •  茂木健一郎さん(撮影・佐藤優樹)
  •  黒柳徹子著『窓ぎわのトットちゃん 新組版』(講談社文庫刊)
  •  茂木健一郎さん(撮影・徳丸篤史)

 地域にもよるが、夏休みもそろそろ終わり。子どもたちが学校に戻る季節である。

 毎年、この時期になると思い出すのが、黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』。国内だけで800万部を超え、戦後最大のベストセラー。子どもの頃の黒柳徹子さん、すなわち「トットちゃん」を主人公にしたこの自伝エッセーには、教育の一つの理想の姿が描かれているように思う。

 トットちゃんが通った「トモエ学園」はもうない。時代が流れ、子どもたちの学びのあり方も移ろって、当時と今では事情が異なる点もある。それでも、ただ一つの真実だけは変わらない。子どもをひとりの人間として尊重することが大切だということ。トモエ学園の小林宗作校長は、前の学校ではなじめなかったトットちゃんを最初から一人の人間としてあつかった。それで、トットちゃんはよみがえった。

 どんなに小さな子どもでも、無理やりに何かの枠組みに押し込もうとしたり、ルールに従わせようとしたりするのは教育的に良くない。もちろん、学校や先生には大切な価値観や、方針がある。それでも、「こうなんだよ」と伝えたら、子どもがそれを受け止めて消化する余裕を与えることが大切だと思う。

 何よりも、子...

残り 1511 文字
このページは会員限定コンテンツです。
会員登録すると続きをご覧いただけます。
無料会員に登録する
会員プランを見る
会員登録済みの方
この機能はプレミアム会員限定です。
クリップした記事でチェック!
あなただけのクリップした記事が作れます。
プレミアム会員に登録する ログインの方はこちら

トップニュース

同じカテゴリーの記事